短編

□あなたが言う幸せって
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ねぇ
あなたは幸せにできるのかな
本当は近づいちゃいけなかったんじゃない?




あなたが言う幸せって




僕は雄兄に特別な感情を持っていた。
『恋愛感情』
しかもドロドロな感じで。
そりゃもう熱心に目で追っちゃうよね。
それで気がついた。
ここ最近、どうやら雄兄と剛兄仲がよさ気で・・・多分付き合ってんだと思う。
そんなのって、ありなの?
気づいた途端失恋
相手は男
その相手の相手も男
妻子持ちの不倫中
同じユニットの仲間3人
ホント、笑っちゃうよね。
そんな自虐的なことを考えながらパソコンを眺めていた。
HPは剛兄のブログ。
プロフィールの欄に眩しい笑顔の剛兄と家族の画像がアップされていた。
「ちーす」
ナイスタイミングで羞恥心の楽屋に入ってきたのは剛兄だった。
「・・・おはようございます」
ドス黒い感情が溜まっている僕には気づかず、剛兄は僕の後ろからパソコンの画面を覗き込んだ。
「おわっ、ちょっとなに恥ずかしいの見てんの」
なんて慌てた様子。
テーブルについた手に見覚えのあるブレスレットが光った。
・・・雄兄とお揃い。
その瞬間何かが切れた。
「剛兄、今幸せですか?」
荷物を降ろしながら剛兄は不思議そうな顔でこっちを見ながら答えた。
「え、あー・・幸せだよ?どうし「ですよね、好きな人と結婚できて可愛い子どもに恵まれて」
もうダメ、我慢できない。
「挙句の果てには雄兄まで持ってっちゃうんだもん」
張りつめた沈黙。
「・・・・」
「・・・・・・え?」
掠れた声、動揺しているようだった。
「気づいていないとでも思った?」
あぁ、きっと僕今酷い顔してる。
泣きそうなのに引きつって笑ってのが自分でもわかる。
心が冷たい。
でも今なら全部言えるよ。
「あんた、自分の置かれてる立場わかってる?自分はそれで幸せだろうけど、雄兄がそれだけで十分だって言っても一生報われないんだよ」
「直樹、お前・・もしかして・・雄輔のこと」
「あなたはわかってない・・」
あなたが自宅へ帰る時、あの人がどんな瞳でその背中を見つめているか。
あなたがいろんな情報の媒体で家族に愛情を伝えることが、どれだけあの人を傷つけているか。
あなたがいない寂しさを刹那の触れ合いで埋めていること、どれだけの苦しみを味わっているか。
「あなたにはあの人を幸せにできない」
冷たい一言が響いて、僕は呆然としている剛兄を後に部屋を出た。
やっと言えた言葉。
でも全然すっきりしない。
こんなこと言っても良い方向になんて向かわないことはわかっていたから。
でも心に留めて置くには辛すぎた。
屋上は夕焼けが半分夜に飲み込まれている。
雄兄ごめんね、勝手なこと言って。
僕のこと好きになってなんて言わない、剛兄と別れてなんていわない。
願わくばあなたが心から幸せでありますように。
そう星空に願った。

end

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