短編

□腕の中(前)
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ちょっと悩んでます。
恋したと気づいた瞬間落ち込みました。
・・・ヘルプっ!


腕の中(前)


雄輔は廊下を歩きながら悶々と考えていた。
眉間にしわ寄せて、口は若干尖らせて。
途中で大将に呼び止められたのも気がつかず、腕を掴まれて我にかえった。

「あー!お疲れ様です!」
「あ〜じゃないよ、何回呼んだと思ってんの」
「あはは、ちょっと考え事してて」
「・・・」
心配顔の大将に引っ張られて、人気のない非常階段の踊場に出る。

「何っスかぁ?」
「それはこっちの台詞。何?どーしたの」
そんなに心配されるぐらい酷い顔してたかなぁなんて思いながら雄輔は話し出す。
「いや、なんつーか・・好きな人ができた・・・かも?」
「なんで疑問系なんだよ」
なんて笑いながら大将は聞いてくれる。
年上で、身近な人で、ある事情で恋しちゃいけない人。
そこまで話しても大将は誰かとは聞かなかった。
「・・まぁ俺も無理な恋愛したことあるから思うんだけどさ、恋愛って飴玉みたいなもんじゃない?」
そう言って、ポケットから大きいビー玉サイズでイチゴ味の飴玉をとり出した。
「んなサイズすぐに食べ切れないっしょ?時間かけて溶かしてくじゃん。飲み込んじゃってもいいし、噛んで砕いても良い。雄輔が辛いっていうなら吐き出したっていいんだよ。」
雄輔の手のひらに飴玉を乗っけて握らせる。
「お前はどうしたい?大丈夫、お前の選択なら間違ったりしないから。」
ばしばし2回肩を叩いて大将は非常口をくぐって戻っていった。
「大将!あんがとっ」
振り向かず右手だけ上げて合図する。
残された雄輔は右手に握った飴玉を見つめてた。

end

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