短編

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雄兄の目が見えなくなった・・・




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会議室
僕は耳を疑った。
だって目の前にいる雄兄の目は
「開いてますよ?」
か細い声でマネージャーさんに聞いた。
「でも見えてはいないんだよ。本人のショックも大きいし、当分は活動停止になると思う。二人には申し訳ないと思うんだけど・・・」
そんなの自分達なんてどうでもいい。
目が見えない、俳優にとっては致命的だ。
雄兄とマネージャーさんは沈黙のまま、剛兄はさっきから呆然としていた。
「・・・雄輔」
ふと、始めて声を発した剛兄に、雄兄の肩がビクッと震えた。
僕の隣に座っていた剛兄は椅子から立ち上がり、雄兄の隣まで行くと、ぎゅっと頭を抱きしめた。
「お疲れ様」
一言だけ呟く。
途端、剛兄の胸に顔を埋めて、多分泣いていた。
「いつでも戻ってこれるから」
優しい優しい剛兄の声だけが響いた。


end

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