短編

□Platonic
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昔聞いた気がする。
こんな愛をなんと呼ぶんだっけ?


Platonic

正直なところ、今の状況がイマイチ飲み込めない。
結論から話していくと、今何故かホテルの一室につるのさんと二人で泊まってます。
てか、付き合ってます。
なぜ?なぜ?ホワァイ?
だって男同士だよ?妻子持ちだよ?俺らいい加減ヤバァイお年頃だよ?(多方面で)
俺はベットの淵に座って、悶々と考えていた。
お風呂場からはシャワーの音と鼻歌。
なに浮かれてんだ、あの人は。
とりあえず、まだあがらなそうなんでこれまでの経緯を見直そう。


告白したのは自分。
俺とつるのさんとノックで飲んでた時、つい勢いで言っちゃった。
相当酔ってたんだと思う・・・。
「俺!つるのさんが好きです!!」
「おー、ボッキンも好きだよぉ〜」
へらって笑うつるのさん。いや、冗談じゃないんです!likeじゃなくてLOVEなんですっ!
「あーずるいっ。僕も剛兄と雄兄、大好きだよ!」
いやだからノック、俺はlikeじゃないって!
なんて思ってたら俺とノック、つるのさんに頭ガシガシされて
「二人とも大事な弟だもんなぁ〜。お兄ちゃんも大好きだよ」
ちがーーーう!!って言っても雰囲気からしても信じてもらえそうにない。
よーしよし!なんてムツゴロウさん並にワシャワシャするつるのさんを恨めし気に見つめた。

その後、頭冷やしてこようとトイレに向かった。
用も済んで手洗い場に行くと見慣れた顔が。
つるのさんだ。
「おぉ〜」
「・・・」
なんとなく気まずくてリアクションできない俺。
ちゃっちゃか手を洗って戻ろうとした時、腕を掴まれた。
「雄ちゃん、なに怒ってんの?」
「お、怒ってなんかっ・・」
「嘘」
なに気に壁際まで追い詰められている。
やばい、なんかアホみたいにドキドキしてる。
「雄ちゃん」
見つめられるだけで金縛りにあってるみたい、頭ん中まっしろ。
「俺と付き合っちゃおうか?」
もう「うん」としか言えなかった。


なんでつるのさんを好きになったか覚えていない。
ホント、感覚。
つるのさんにも聞いてみた。
俺のこと、本当に好きなの?
「当たり前じゃない」
いつから?
「さぁね。覚えてない」
なんであの時付き合おうって言ったの?
「あん時あまりにも雄ちゃんが睨んでくるんで、キュンとしちゃったんじゃない?」
もう、はぐらかすんだから。
「そういう雄ちゃんは?いつ・どこで・どこが?」
・・・覚えてない。
「プッ。本当僕チンたちってお馬鹿だよね。そこんとこ重要だっていうのに。」そんな曖昧な関係だった。
手は握った、キスもした、でもその先はなし。
2ヶ月付き合ってお前ら高校生カップルかっ!て感じだけど、俺には知識がないしなんとなく欲求もない。
つるのさんも求めてこないし。
まぁあの人には家庭があるし、俺にはほんの少しの気持ちと付き合ってるっていう事実があればそれだけで満足だったのです。
あれ?こんな付き合い方ってなんていうんだっけ?
ぷら、ぷら、ぷら・・・プラスマイナスドライバー?
違ェ、工具じゃないつーの。
ブラトニー?
ナニソレ、外人?
違う、あの本とかにもなったやつ。
なんて小一時間、携帯で調べてやっとでてきました。
『Platonic love(プラトニック ラブ)』肉体的欲望を離れた純粋に精神的な恋愛。
あれ?チューは肉体的に入るのかな?ま、いっか。


まぁ、そんな感じで今に至ります。

きゅっって音がしてお風呂場の扉が開く。
反射的にびくってした。
落ち着け俺、確かにホテルは今までなかったけど家にはよく来てるじゃないか。
たまたま今回だけ、撮影が長期になりそうだからホテルを(別々の部屋だけど)取ってるだけだし。
いつも何もないんだから、落ち着け!俺!
「楽しそうだね?雄ちゃん」
ばたばたベットで俺が暴れている様を楽しそうに眺めてるつるのさん。
「・・・って、なんで上半身裸で下バスタオルなんですか?!」
「ん?だって暑いんだもん。も〜男同士なんだし、今更照れる間柄じゃないっしょ?」
俺は慌ててお風呂場に逃げ込んだ。
ばかばか、つるのさんのばか〜〜俺だって心の準備があるのにっ。
冷たい水をかぶること一時間。
コンコン
「ゆーちゃーん、いつまで入ってんの?風引くから」
あんたの格好の方が風引くわ、なんて思いながら渋々お風呂場から出た。
ベットにはちゃんとバスローブを着たつるのさん。
俺は持ってきたジャージがあるから使わないけど。
つるのさんの横に並んで寝ころがる。
「ブログ?」
「そぅ」
俺も書かなきゃなぁなんて考えてると、作成文書を保存して携帯を閉じた。
「え、いいの?俺待ってるけど」
「いーの」
って言いながら向かい合わせになって軽いキスをされた。
「寝よっか」
ほらね、なんにもない。
「…ねぇつーのさん、男同士ってどうやってエッチすんの?」
「へ?」
マヌケな返事。
でも困ったように笑って、案外真面目に答えてくれる。
「いや、ボキもある程度知識だけはあるけど、いかんせん経験がないから…」
寧ろ最近覚えた「いかんせん」という言葉を使いたかっただけだろうか。
「なに?雄ちゃん欲求不満?」
「好奇心ですぅー」
つーのさん、顔がエロ親父ですよ。
「まぁリスクもそれなりにあるみたいだしね。雄ちゃんがしたいならお付き合いしますよ?」
「だーかーらー、なんで俺のこと欲求不満みたいに言うのっ」
「だってあれってめちゃくちゃ痛いらしからさ、そんな可哀想なこと、ボキ雄ちゃんにできないもん」
…剛兄さん…それって…
「何故俺が女役?…納得いかねーよっ!!」
カバッと起きて抗議する。
「は?ボキが雄ちゃんの下なんて想像できないから!!」
負けじとつーのさんも起き上がり、いつの間にやら言い争いに。
「そんな華奢なくせに俺のこと抱けると思ってんの?!」
「なっ!できるよっ。てか雄ちゃん、やり方知らないんでしょ?」
うっ…痛いところを…
俺は口が空いたまま、顔を真っ赤にしてわなわなしていた。
「ボキ痛いの無理。だから雄ちゃんが上とか絶対無いから」
俺だってヤだよ。
でも知識が無いのは事実な訳で…。
それでも俺は納得いかなくて、唇を尖らせて拗ねてみせた。
つーのさんから浅いため息が零れて、俺の尖った唇にまた軽いキスをする。
「まぁ、やるやらない・上下置いといてさ、別にやりたいって全然思ってない訳じゃないんだよ?ただボキは雄ちゃんが一番大切だから、無理やりとかしたくないの」
俺のこと胸に抱き込んで、子どもにするみたいになでなでとかとんとんするつーのさん。
ちょっとずつ俺の機嫌もなおってくる。
「だって、したい訳じゃないんでしょ」
さすがつーのさん、そこんとこ勘が鋭いんだから。
「ボキはいつまでも待てるから、したくなった時また上か下か考えよう?」
こめかみにまたちゅう。
「うん」
好きになった理由はわかんない、付き合い初めも微妙。
でもすっげー愛されてんなって思った。
眠りかけの微睡みの中、心の中でつーのさんにありがとうを言った。

まだPlatonicでもかまわないらしい。

end

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