ルパン三世
□1.1
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次元はオープンカフェにいた。
そこは今アジトとしているアパートの一室から程近い場所で普段は和やかな雰囲気のカフェだ。
けど今は前回来た時と打って変わりガンベルトを腰や太股に巻き付けた男達で埋め尽くされかなり険悪な雰囲気が流れている。
煙草に火をつけ、コーヒーを一口啜り、帽子のひさしの影から向かいの客に目をやった。
目についたのは下品な二人組。
店員が怖がるのを見て楽しんでいる彼らがビールを頼んだ時、その二人組は次元の視線に気付いた。
そしてコソコソと何かを話している。
どうやら次元の正体に気付いたようだったが、自分の顔を知らないようじゃ所詮業界の二流だ。
そこまで思って次元はコーヒーに溜息を吹き込んだ。
そのとき、二人組の背後の使われていない積み上げられた椅子の影から細い腕が一本テーブルに伸びたのが見えた。
二人組のテーブルに置いた銃をスッと掴む。
その銃はパラ・オードナンスのP16ー40。
カナダ製の40口径弾16発装填可能なオートマチック。
命中精度も高いし悪くはない。
だが16発というのは自分の腕が悪いのを宣伝しているようなものだ。
伸びていた小さな手には大きすぎた銃だった。
そっと引き寄せたのはいいものの重さを予期していなかったのであろう、持ち上げた瞬間ガタンと音をさせて落としてしまった。
「何だ、こらあっ」
「小僧!」
振り返った持ち主が怒鳴ってその細い手首をがっと握りしめた、もう一人の男の銃が火を噴いた。
二人に椅子の影から引きずり出されたこそ泥は12、3歳ぐらいにしか見えない子供だった。
つぎのあたったツイードのパンツをサスペンダーで吊るし、大きすぎるハンチングを目深に被っている。
テーブルごと地面に引きずり倒されると固く結んだ唇の奥からうめき声が洩れた。
男達が店員に文句を言い、こそ泥に銃を突きつけ強く攻め立てた。
次元はコインをテーブルに投げて立ち上がった。
ああ、退屈過ぎて欠伸も出ない。
丸腰の子供相手に銃を突き付けるなんて二流どころか三流だな。
チャリン、というコインの音に全員が振り返った。
その隙に子供が逃げて次元の後ろに隠れた。
「そうか、お前の仲間か」
「何のことだ」
子供が迷惑なことに次元のジャケットをしっかり掴んでいた。ハンチングのせいで表情は見えないが。
少し背の高い女の黒髪と逆に背の低い銀髪が子供の側に来ようとしているのが見えた。
男達はそれに気付かない。
「お前も大会に出るんだろ。
それで俺みたいな腕利きに当たっちゃマズイってんで、その小僧を使ってハジキを盗ませようと…」
「それはYouの間違いだよ」
「誰だ、お前は
女が話に頭を突っ込むんじゃねぇ」
「まあまあ、少し落ち着きましょう
この子も怖がっていますし…で、貴方は子供に盗ませるようなことなんかしませんよね?」
「俺はただコーヒーを飲みに来ただけだ」
「ふざけるな!抜けっ」
男達が次元に拳銃を向ける。
「ミーはやめといた方がいいと思うよ?
You達のheartがBang!…しちゃうよ?」
「ああ、朝は狙いが甘くなって外すつもりがつい、ってことがあるかもしれんな」
「何だと、なめてんのかあっ」
「遅いですね」
ガゥン!
ショルダーホルスターがデトニクスの撃鉄を起こし、照準を定める間に黒髪の女の銃が火を噴いた。
いつの間に手にしていたのか角度計算までして一人の男の銃を飛ばせばもう一人の男の銃にガキン、と音をさせてぶつかり手から弾かせた。
本人は至って冷静でさっきまで手にしていた愛銃の姿はもうしっかりとガンベルトの中に納められていた。
「うわあっ」
「まったく、五右エ門じゃねぇが、朝からつもんねえモン、撃っちまったな」
「全くです。
それに喧嘩を吹っかけた本人は撃ちたくないとか駄々をこねて、わんに撃たさせるんですから」
二人は銃を拾って逃げ出した。
そして次元は二人の女と向かい合う。
「えへへー、sorry、滸」
「いつものことですから」
「よくここがわかったな、滸、炯」