ルパン三世

□1.2
1ページ/2ページ




「どうやってここまで来た」




着けられてるとは思わなかったぜ、と次元が小さく呟いて帽子を深く被った。

にこりと腕の中で笑う炯がその帽子に隠れた瞳を見るために下から覗き込んで来る。




「ミーが連れて来たの」

「わんは止めましたからね、あの方法は危険過ぎます」

「いいじゃーん!ちゃんとpick upするように言ったもん!」

「あの方法ってなんだ?」




ルパンが滸の顔に掛かる髪をのけて一房掬っては指に巻き付けてクルクル回して遊ぶ。
滸もまんざらではない様子で少し微笑んでいる。

そして炯が何やらシャカシャカと振りながらあるものを取り出した。




「Marble chocolate!
これを来るときにdrop…つまり落としながら誘導したんだ♪」

「…ヘーゼルとグレーテルみたいなモンか」

「That's light!正解だよ、次元!」

「でももしこの子が広い忘れてたらどうしてたのですか?」

「そりゃここのapartはばれちゃうよね」




おいおい、よしてくれよ…ルパンが小さな溜息をついて滸の肩に顔を埋める。
そして問題の少年に目を向けて真剣な顔付きで尋ねた。




「何の用だ?坊主」

「射撃を覚えたいんだ」




少年はマリオと名乗った。
(その時滸と炯がハンチングを赤色のものと取り替えようとした)

まだ声変わりもしていないのか、甲高い声だった。




「お姉さん、ピストルうまいんだろ。
ぼくに教えておくれよ」




次元からカフェでのことを聞いたルパンは首を振った。




「なんだってそんな危険なこと…」

「ですから、炯が駄々をこねたのですよ
わんは助ける気はありましたが前線に出るつもりはなかったです」

「大仕事の前だから騒ぎになるのはマズいと思って、ハジキを狙って撃つつもりだったんだが炯が撃つなと言ったからな」

「Bad(ひどい)!
結果的に何もnothingだったからいいじゃん!」

「今頃仲間かき集めて、お前達のこと探してるんじゃないのか」

「……Sorry…そこまで考えてなかった」




しゅん、と落ち込む炯をあやしながら次元は舌打ちした。
滸まで落ち込むものだからルパンは言い過ぎたかもしれない、と内心穏やかではない。




「頼むよ、お姉さん。教えておくれよ」

「ですが、わんよりも次元の方がプロですよ
わんはどちらかと言えばトラップの方が得意なので」

「じゃぁ、おじさん。教えておくれよ」




マリオは次元に縋った。
目元はハンチングに隠れているが、通った鼻筋とふっくらした唇はよく見ると浮浪児らしくない。




「お前さ、パパとママのところに帰れ」

「いないよ、そんなの」

「なんで」

「死んじゃった」

「じゃあ、おじさんとかおばさんとか」

「それもいない。
ねえ、お願いだから、ピストルをボクに教えて。教えてくれたら、何でも言うこと聞くから」




マリオが唇を尖らせたのを見た滸と炯はどうにも言えない感情に押しやられた。




「じゃあ、わんと炯が教えます。
何でも言うこと聞くのでしょう?」

「もちろん聞くさ」

「じゃあミーとマリオはfamilyになる!
それを聞いてくれるならミーはOKだよ」

「わんも、家族ですよ」

「お姉さん達………」




マリオの見えている口元が驚きと喜びでパクパクしている。
そのうちハンチングの下の目元をゴシゴシ擦っては笑顔で大きく頷いた。




「それはさておき、一体お前カフェで何をするつもりだったんだ」

「あいつのピストルを盗んで、練習しようと思ってた。
ボク、まだ一度もピストル撃ったことないんだ。だから…」

「あのな…」




言いかけた次元を制してルパンが口を開いた。




「ボウス、なんでそんなにピストルがうまくなりたいんだ?」

「た、大会に出たいんだよ」

「大会?」

「そういや、カフェにいたガンマンもそんなこと言ってたな」

「あら、二人とも知らないんですか?
ドゴン主催の早撃ち大会です
三日後に開催されるのですが優勝者には100万$の賞金がもらえるんですよ」

「ミーは二人がそのドゴンが現れるときいつもhip(腰)にぶら下げてる純金製のpistolを狙うかなって思ってここへ来たんだ」

「馬鹿くせえ、それに趣味が悪いな」




次元がソファにひっくり返って言った。
その時まだ腕の中にいる炯も一緒にソファに投げ出され"What's!?(何!?)"と小さく声を上げる、が無視される。




「世界からガンマンが集まっているんだ。
予選を突破したら、ドゴンお抱えの拳銃指南役、ラピッドと対決するんだよ。
その時は本物の銃と弾を使うんだ。勝ったら100万$と指南役になる権利がもらえる。
四年前から始まった大会で、今年が二度目なんだ。
ラピッドは前回の大会で優勝して指南役になった」

「下らねえ。拳銃使いが給料もらうようになっちゃおしまいだ」




次元が鼻を鳴らすとその隣に滸が座って炯と何やらコソコソと話しはじめたがサッパリ聞こえなかった。







次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ