ルパン三世
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「まず、空港で何があったのですか?」
滸のその言葉で辺りが静まるが少しずつルパンが話しはじめた。
「空港へ向かったらカフェで滸にハジキを飛ばされた二人組が密告してたんだよ、ラピッドに。
やけに警備が厳しいと思ってはいたが逃げれると思ってた。
まだなんもしてねえからな…」
「ですが、捕まった。
…大会に出るように言われたのですね?」
「ご明答。
俺達を大会に出すためにその二人組はラピッドとの早撃ちで負けて死んじまったよ」
「みせしめのためですか…惨いですね」
「それで俺達は仕方なくここに戻ってきたんだよ」
次元がそう締め括れば滸は納得したように頷いた。
「では…今からやることを分担しましょう。
わんは位置を確認するので、ルパンは外を見張っていて下さい、もうそろそろここを脱出します。
ああ、次元は炯を起こしてくださいね」
「…炯ちゃんたらいつの間に寝てたの?」
「さぁな…」
体を揺さ振れば(ソファの端でうずくまってた)のっそりと上半身を起こし起き上がる炯に苦笑いしつつ、ルパンは窓の外を覗いた。
辺りは真っ暗で夜になっていた。
逃げ出そうとしないルパンと次元に警官達の警戒も薄まりつつある。
パトカーの座席に座ったり、壁にもたれ、ただぼんやりと時間を過ごしている。
「…Posso fumare(煙草吸っていい)?」
「おい炯、寝起きだからっていきなりイタリア語を話すな」
次元が懐から出した煙草を一本加えればそっとライターで火を着けられた。
Grazie(ありがとう)、と呟いて目をゴシゴシと擦る姿は余りにも幼かった。
パトカーの外に立っていた警官が、ふと目をあげた。
二頭の馬に引かれた馬車が近付いて来たからだ。
馬車の荷台にはワインの樽が積み上げられている。
「なんだ、小僧」
「えっと、ルパンさんのお宅ってこのアパートですよね。
さっき注文があって、見張りのお巡りさん達にワインの差し入れを届けてくれって」
「馬鹿なことを言うな。我々は職務遂行中だぞ」
「そんなこと言われても。
おいらがワインを届けずに帰ったら、親方さんにぶん殴られちまいます。
下ろしますからね」
「ちょっと待て!おい、こらっ」
窓の外が騒がしくなって来たのを滸に伝えると滸はパソコンを閉じて鞄に入れ、側に置いていた愛銃を背中と腰に持ち直し立ち上がる。
釣られるようにしてルパンと次元も立ち上がるが、炯は未だに眠いのかボーとしている。
「…Operation change(作戦変更)…」
「動くのがめんどくさいだけでしょう?
…まあいいです、その方が都合がいいですから」
外では警官の制止の声も聞かず、荷台の止め板を外し、馬の手綱を叩くマリオの姿。
馬は勿論走り出し、それとともに止め板の無くなった荷台の樽がゴロゴロと転げ出た。
樽は石畳に落ちると割れて、中身を辺りにぶちまけた。
「うっ、こりゃあっ」
「ガソリンじゃないか!」
流れ出たガソリンは瞬くまにパトカーの下にも広がり、辺り一帯を浸した。
くるくると回る松明が投げ込まれたのはそのときだった。
ぼんっという音をたてて、辺りが火の海になる。
叫びをあげ、警官達が逃げ惑い、車内にいた警官が飛び出した瞬間、パトカーのガソリンタンクは爆発を起こした。
「今です!」
「Good luck.滸、ルパン…次元!」
「炯!?」
アパートの中から逃げ出した3人はそのまま馬車に乗り込んで逃げていく。
「あっ、逃げたぞ!」
「Help…Help me!」
「くそっ、一般人が巻き込まれてやがる!」
救護隊を呼べー!
その声が響いた頃には馬車は見え無くなっており、追い掛けて行ったパトカーも予想よりずっと数を減らすことが出来た。
ニヤリと炯は小さく笑った。