ルパン三世

□1.5
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やばいっ、呟いたルパンは人型標的紙の影に隠れた。
炯も咄嗟にその場から離れてドゴンの方を見る。




「警察官には儂から言っておく。
その次元とルパンとやらを、この国からは絶対に出すな。
儂はもう少し練習するからな」

「…………。」

「小娘、名前を何と言う?」

「………Mary(メアリー)」

「そうか、メアリー。
お前を大会の景品にするのも悪くない」




扉の外にいる部下に声をかけ、炯をがっはっは、と豪快に笑いながら射撃台に歩み寄ると、ルパンの隠れている射撃紙を狙って撃ちはじめる。

ドン、ドン、ドン。

銃声が響き、硝煙が晴れるのを炯は待った。
ルパンは無事だろうか。


心配も必要ないほど標的紙は真っさらのままだった。
ドゴンの狙った弾丸は、ルパンの股の間、脇の下を射抜くことになったのだ。

二人は同時に安堵の溜息を漏らす。




「ううむ。こりゃあ銃が壊れておる。」




ドゴンは銃を放り出し、ドラムマガジンをつけたトンプソンM1928(毎分700発のスピードを出す機関銃)を手にとり、標的紙をズタズタの紙吹雪に変えて悪人顔で笑う。




「お前もこうなりたくなかったら、大人しく景品にでもなっておけ。
どういった経緯でラピッドがお前を気に入ったかは知らんが儂はお前を今すぐにでも殺してやりたいわ」

「…………。」




キッと炯が睨みつければふっふっふっと笑いながらレンジを後にするドゴン。

しばらくして天井を見上げると二度目の溜息を吐いたルパンと目があった。
機関銃を取りに行っている間に天井にぶら下がったのだ。




「…ルパン、気をつけて。
もう少し右に行けば監視カメラに映っちゃう」

「おっと、危ねえ…
それよりお前、どうやってラピッドに取り入ったんだ」

「次元にはsecretだよ?
…会って早々抱き着いた…」

「はぁ!?」

「盗聴器を着けようとしたんだ、けどmissした」

「ばっかでぃ」












「ただいま」

「お帰りなさい、ルパン」

「炯はいたか?」

「ああ、元気そうだったぜ。
ラピッドに偉く気に入られてたしな」

「…なに?」

「だがドゴンには嫌われてるから、大会の景品にされちまった」

「っち……」




次元が帽子を深く被り直し、滸は苦笑いを浮かべた。




「弾丸に埋め込まれたダイヤモンドは、少なく見積もっても5カラットか6カラットはあったぜ。
そいつが6個だ。純金のコルト、たいしたお宝だ。」




マリオは手入れをしながらルパンを見る。
ただ撃つだけでなく、メンテナンスも次元は教えているのだ。




「けっ、趣味が悪いや」

「将軍は、お前とは趣味が合うと言って喜んでいた。なんなら聞いてみるか?」

「あ、それ、わんが炯に渡した盗聴器の受信機じゃないですか」

「上手いことラピッドに取り付けてくれたぜ」

「抱き着いたりしたんでしょうか?」

「………………。」




ルパンは何も言わずに受信機の電源を入れるとさっき自分が聞いていた話が流れ、その後は今まさにラピッドが会話しているものが流れてきた。




「………マリオ、手入れが終わったら、今度は抜き撃ちの練習だ。
大会が始まりゃ、警備はそっちに釘付けだ。

その間に俺達はこの国からおさらばだ。
そうだろ、滸」

「え、なぜわんに聞いたのですか?
でも、それはどうでしょうかね?
まず炯を助け出さなければなりませんし、それに…」




滸がマリオに目を向ける。ルパンも同じくマリオを見た。

ルパンに合図されたマリオが銃を抜いた。




「1.8秒」

「どう思います?
ラピッドに勝てると思いますか?」

「勝負にならねえ。
銃がガンベルトにまだあるうちに、マリオは奴の弾を喰らっているだろう」




次元が首を振るとマリオがうなだれた。
そして滸が優しく尋ねる。




「マリオ、それでも大会に出場したいのですか?」

「ボクは絶対に出る。止めたって無駄だ」

「ですって。
次元、どうします?」

「どうするもこうするもねえ。
俺は頼まれたから射撃を教えた。
それでこの小僧が早死にしたって、俺の知ったことじゃないね」

「炯が絡んでいたとしても、ですか?」

「あいつは賞品になっただけで、関係ないだろう」




次元がぶすっと答えると、滸はあからさまに溜息を吐いた。




「マリオ、お前さんの本当の狙いは賞金じゃない。




ドゴンの命だろう」



ルパンとマリオの視線が交差した。






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