ルパン三世

□1.6
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「何だと!?」

「どうしてそれを――」




マリオはルパンを見つめた。
ルパンと滸は微笑んだ。




「俺は次元のような野暮天じゃない。
お前さんが女の子だってことは、滸がお前に抱きついた時の表情で気付いた。
そうだろ。マリー公女。」

「ここでは女の子に戻ってもいいんですよ、マリオ、いえ、マリー?」




マリオは立ちすくんでいた。
やがてハンチングを脱ぎ、隠していた長い髪と目を三人にさらけだした。

美しい少女の顔がそこにあった。




「一体なんのことだ?」

「八年前のクーデターで、ドゴンは王族に連なる一族を全て処刑した。

だがたった一人、その殺戮から逃れた人間がいた。
王の一番下の姪に当たる、マリー公女だ。

マリーは当時八歳で、スイスの寄宿学校に留学していた。

マリーの両親、弟は、全てドゴンに処刑された。」

「ドゴンはマリーの家族を一人一人、自慢のコレクションの銃を使って、自らの手で殺したんです。
違いますか?」




ルパンと滸が告げるとマリーは体を震わせた。




「その通りです。
それを知ったときからずっと、ドゴンに復讐する機会を待っていた。

でも用心深く、警備の厳重なドゴンを暗殺する機会はなかった。

この四年に一度の早撃ち大会の時にだけ、ドゴンは姿を現すんです。
大会の結果なんてどうでもいい。
私は撃ち殺されたって構わない。

ドゴンを殺すことができれば。
両親と弟の敵を討つことができれば…」




切れ長の美しい瞳から、涙が一筋、流れ落ちた。




「というわけさ、次元」

「炯も始めから気付いていました。
だから独断でドゴンの元に忍び込んだんじゃないでしょうか」

「なんだぁ、つまり、世が世なら、マリオ、いやマリーはこの国の王女様ってことかよ。」

「そんなことはもうどうだっていいんです。

私は王位になんか興味ありません。
この国の人が、ドゴンの独裁から解き放たれることを願っているのは知っています。

でも、私が一番したいのは復讐なんです。
その結果、私が死んでしまえば、王族は死に絶える。

でも、それはそれで構わない。

誰か、ドゴンよりもっと民主的な人がこの国を治めればすむことです。」

「ま、待てよ。
俺はお前の自殺の手助けは御免だぜ」

「さっきと台詞が違うな、次元。
早死にしたって知ったことじゃないと言ったのは誰だっけ?」

「あれは…」




次元は口ごもった。

滸がマリーのそばにより自分の相棒と同じぐらいの身長の彼女と目を合わせるように膝を曲げた。




「嫌な野郎だぜ」

「でも、わんはいくら死なせてくれと頼まれてもマリーを守ります。
家族ですからね」

「だがな、大会には出てもらう」




滸の言葉に涙を流しながら頷くマリーだったがルパンの言葉に次元と共に振り返った。




「なんだって!?」

「ルパン!」




ルパンはにやりと笑った。
滸は察したように頷いた。




「お宝をいただくためにですね?」

「その通り!」












「エントリナンバー21、香港出身、両手撃ちのウー

エントリナンバー9、南アフリカ出身、コヨーテ」

「ウーがベレッタM92Fの二挺拳銃。
コヨーテがコルトガバメント。
いいデータが取れるといいんですが」




二人の間には透明な防弾ガラスの壁が二枚設けられていた。

それぞれ立ち位置が決められており、そこから離れると失格になる。

防弾ガラスに拳銃弾は容易には貫通せず、弾丸はガラスで食い止められる。

開始のブザーとともに向かい合った選手は銃を抜き、発砲する。

どちらが早く、また相手の急所を狙えるか。

コンピューターによって審査されるのである。

決められた範囲の中では寝転んでも何をしても構わない。


会場は直径二メートルの円形で、防弾ガラスの張り巡らされたドーム状の客席に囲まれている。

そこにドゴンを始めとする要人、見物人、そして景品の炯がいた。

大会の模様は国営テレビにより全国、海外にに中継されていた。


早撃ち大会は一回戦の終盤まで進んでいた。

すでに12組が対戦し、六名の二回戦敗退者が決定している。




「レディ」




アナウンスが流れた。
ブザーの鳴る前に銃を抜けば失格だ。


ブザーが鳴るとコヨーテが一瞬早く、ガバメントを抜いた。
遅れてウーが二挺のベレッタを構える。


再びブザーが鳴らされ、銃声が止んだ。

ガラス板は無数の丸い弾痕がついている。

複数の係員が現れ、ガラス盤を新しいものと交換される。

使われたガラス板は計測のために運ばれていく。

やがて審査結果のアナウンスが流れた。




「ファーストブレッド、コヨーテ。
20ポイント。
セカンドブレッドウー。
0ポイント。」




弾丸が対戦相手のどの部位に命中したかでポイントは決まる。
50ポイント以上が勝利の条件だ。




「サードブレッド、コヨーテ。
80ポイント。
ウィナー、コヨーテ」




一発目と二発目以降の区別をするのはあらかじめ着色された、弾頭である。




「一回戦、最終組。
エントリナンバー4、アメリカ出身、ブロンコ・ジョーンズ。

エントリーナンバー28、当日申込者、日本出身、次元大介。」







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