ルパン三世
□1.6
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「さぁ、いよいよですね!
相手はルガースーパーブラックホーク、44マグナム弾を使用する強力なリボルバーですが…」
「次元、大丈夫かな?」
「ふふふっ、見てればわかりますよ」
次元はガラス板の前に立つ前に炯の方を盗み見た。
逃げないように手枷をされていたが、すでに抜け出したようでフリーの手で次元にガッツポーズをして見せた。
「レディ」
ブザーが鳴った。
その瞬間銃声と共にジョーンズの顔の正面のガラス板にひびが入る。
次元は煙草を咥えたままだった。
ジョーンズの銃口がようやく次元に顔を見せ、弾が吐き出されたが、次元はくるりと背を向け、さっさと去っていく。
「馬鹿にするなあっ」
「怒ってますよ、あの田舎者」
「ガラス板がなけりゃああの世いきだ。」
不機嫌そうに次元が言った。
アナウンスが流れた。
「ファーストブレッド、次元。
100ポイント。
ウィナー、次元大介」
どよめきが流れた。
そのどよめきの中で次元は観客席に近付くと炯に向かって軽く手を挙げた。
炯は一瞬驚いた顔をするが幼い笑顔を浮かべて手を挙げる。
それがいけなかったのだ。
ラピッドが炯の腕を掴み関係者席の方に入っていく。
挙動不審のまま連れていかれる炯を次元は悔しそうな顔で睨みつけた。
「何してるんですか、次元。
あんなことをすればばれるに決まってるじゃないですか」
「……つい、な」
そして二回戦が始まった。
一人席に戻り、ドゴンに解説を行っていたラピッドがふと、次元の方角を振り返った。
二人の視線が絡み合うとラピッドの口元から笑みが消えた。
次元は無言で視線をそらす。
「決勝戦はガラス板なしだ。
四年前の大会でラピッドは対戦相手を撃ち殺してチャンピオンになった。
この大会にエントリーしているのは、人殺しをしてでも100万$が欲しいって奴らばっかりだ」
「拳銃稼業なんてそんなもんだ。
人殺しが嫌ならガンマンはつとまらねえ」
「ねえ滸姉さん」
「どうしたのですか、マリオ」
「あいつは次元に復讐するときを待ってたのかな、僕みたいに」
「…それもあると思いますが…
ガンマンの性ですよ。
自分より早い人がいると聞いたら試したくなるんです。
それで何人もの命が失われています。
わんと次元はルパンのお陰で必要な殺ししかしなくなりましたがね♪」
肩を竦めて微笑む滸に、マリオの姿のマリーは納得したように頷いた。
後ろでルパンが顔を少し赤くしているのに気付いたが野暮なことはするもんじゃない、と黙っておいた。
「しょうがねえ。ラピッドと勝負するぜ。
ただしそれは、奴と戦いたいからじゃない。
俺達の本来の仕事、お宝を戴くためだ」
「炯も取り返さなくてはいけませんしね?」
「うるせえ」
「それでこそ次元大介、俺の相棒だ。
滸は永遠のフィアンセだぜ」
今度は滸が赤くなる番だった。
二回戦、三回戦も次元は勝ち抜いた。
四回戦目の相手はコヨーテでスピード勝負はほぼ互角だったが、次元の弾丸が100ポイントを収め決勝戦に勝ち上がった。
少しの休憩の後、ガラス板の外された試合上で次元とラピッドが対峙した。
「いつかこの日が来ることを夢見ていた。
かつての私は未熟だったが、今は違う。
この銃で葬った相手の数だけ強くなりましたよ、次元兄さん」
「一つ、いや、二つ聞かせてくれ
イーグルアイはお前に早撃ちの極意を教えたか」
「どう思います?」
「ずっと考えていた。
教えていない、と思うね」
ラピッドは勿論なぜかを聞いた。
それに次元は勿体振る訳でもなく言い放った。
イーグルアイはお前を我が子の様に可愛がっていたから、
ラピッドは憤怒する。
ならなぜ自分に教えてくれなかったのか、流れ者のあんたには教えようとしたのに!と。
対して次元は冷静に、ガンマンの性で死に逝くお前を見たくなかったんだろうと答えた。
そして視線をあちこちに動かす。
「もう一つ。
あいつはどこにいる?」
「…彼女ならそこにいますよ、首輪に繋がれて、ね」
ラピッドの指差した方を見れば確かに炯はいた。
文字通り首輪…というより、少しでも反抗すれば首が閉まるようになる革ベルトをつけられて。
無言で次元を見詰めて首が閉まるのも気にせず、一歩前に進んで大声で頑張れと叫ぶ炯に呆れて溜息を吐いた。
「あの景品は俺が貰う」
「私が一生奴隷にして使うのも、いいと思いませんか?」
二人が睨み合い、会場は張り詰めた緊張で静まり返っていた。
アナウンスが思い出した様に告げた。
「レディ」