ルパン三世
□2.2
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「困りますな。
ここは部外者以外立入禁止ですよ」
店の中を調べ回っていた次元と炯は、スタッフルーム二階に上がったところで男三人に呼び止められた。
両脇の男二人は最初から銃を手にしていて、ダブルスーツを着た真ん中の男が二人に言った。
「俺は、連れを捜しているだけだ」
「ミーも。
酔っ払ってここに来たはずなんだけど?」
「ルパンも滸も、こっちへは来てなくてよ、お二人さん?」
「不二子ちゃん!」
壁で死角になっていたところから不二子がすーっと進み出てきた。
炯が嬉しそうに笑顔を浮かべると不二子は軽くウィンクで返してきた。
「部外者は立入禁止じゃねぇのか」
「彼女は部外者じゃありませんよ。
この店のセキュリティ責任者ですから」
「まさか不二子ちゃん…」
「ええ、滸はどうなのかしらね?」
「滸は………」
「そう、わかった」
耳に着けている無線をトントン、と指で軽く小突けば不二子は頷いた。
招待者リストに入ってない次元に帰るように促す男に対し、次元がルパンは不二子に招待されたはずだと返せば不二子は肩を竦めるだけで何も言わなかった。
その会話の後二つの銃口が次元に向けられたが、怯える様子もなく踵を返した。
一歩進んで止まり、振り返った。
「で、あんたは誰なんだ」
「私はカルロス・ポンテ。
この店の支配人です」
「邪魔したな、支配人さん」
裏口から出て行った二人。
外壁にもたれてうずくまるホームレスが、場違いに幸せそうな鼻歌を歌い上げているのを見つけた炯はホームレスに尋ねた。
「30分ぐらいの間にここから出て来た人、いた?」
「誰もおらんよ〜」
歩きはじめた次元はポケットからコインを取り出し、背後に向けて弾き飛ばした。
首を捻って確認してみれば狙いを大きく外れたコインをバンザイしながらキャッチしたホームレスが視界に入った。
大きく頭を振りながら急ぎ足で表通りを目指す次元の後ろを、ホームレスに煙草をあげていた炯は急いで追い掛けて行った。
チュッチュッチュッ 牢獄チュー
鎖も格子もお友達
チュッチュッチュッ 捕われチュー
ルパンは奇妙な歌で目を覚ました。
頭を回して周りを確かめると、そこはまさに牢獄で。
コンクリートの壁、鉄の扉、囲いのない便器。
壁にもたれて座る囚人が一人。
「ん?」
よくよく見れば牢獄の端の方には滸が転がされていた。
滸に駆け付けて意識を確認するが眠らされているだけらしい、控え目な吐息が規則正しく続いた。
「やあ、お目覚めになったようじゃのう」
「あんたは―――」
「わしの名はトゥトゥ。
お嬢さんは無事じゃよ、あんたと違って丁寧に降ろされていたからのう」
ルパンの声を遮るようにして言ったトゥトゥは自分は五年間この牢獄に閉じ込められている、と話した。
一瞬眉間に皺を寄せたルパンは、すぐに気楽な顔に戻った。
「ここはバンディット・カフェの地下なのかい?」
「そうじゃよ」
「俺がここにぶち込まれてからどれくらい経つんだ」
「そうだな、30分ぐらいかのう」
意外に時間が経っていない、とルパンは感じた。
もっと長く眠っていた気がしたのは、薬で眠らされていたからだろう。
その証拠に滸が起きる気配は未だにない。