ルパン三世

□2.2
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「じいさんはなんでこんなとこに閉じ込められてんだ」

「わしはな、この地下に隠されているジャン・パタンの財宝を盗み出そうと計画して忍び込んだんだが、金庫に辿り着く前に見付かってしまって囚われの身さ」

「泥棒が泥棒のものを盗もうなんてよくねえなあ」

「よく言うよ。
あんただって財宝目当てでここに忍び込んだんだろ」

「僕は人捜しに来ただけです。
女子トイレを覗いたら、どういうわけか、牢獄入りです」

「本当か?
何でも盗みそうな顔をしてるがな」




神に誓うように両手を組んでおどけるルパンにじいさんは、すべてわかっている、とでも言いたげに目を細めた。

ルパンは信じてくれようがくれまいがどっちでもいいので話題を変えた。




「ところでじいさん、一年ぐらい前に、この牢獄に入れられた男はいなかったかい。
血祭って日本人なんだが」

「この四年ほど同房者はおらん。
だが、確か一年ほど前、この地下に忍び込んで来た者はおったな。
この牢まで響く悲鳴が上がったから、きっとジャン・パタンの財宝を盗もうとして、罠にかかったんだろう」

「罠っていうのは?」

「金庫を間違った方法で開けようとすると、賊を撃退する仕掛けが作動するようになっているようじゃ。
それに引っ掛かってやられたんじゃろう」




つまり血祭は財宝を盗み出そうと忍び込み命を落とした。
だから昨年のバンディット・カフェ以来、消息が途絶えている。



でも、どうも腑に落ちねえな――――



ルパンが思考を巡らせていると滸の目がうっすらと開いた。
薬のせいでまだ頭が回らないらしく視界にルパンが写っても小さく欠伸を噛むだけだった。




「ひぃーーっ」

「!」




突然じいさんが悲鳴を上げることでぼんやりしていた頭が覚醒し、一気に起き上がって銃を手にキョロキョロと辺りを見回した。




「おい、じいさんなにがあったんだ?
滸、安心しろ、敵はいない」

「なんのことじゃ?」

「びっくりしました…」




銃を腰に巻いているガンホルダーに納め、じいさんを見る。
惚け顔はなんとも面白い。


完全に頭が起きた時、ルパンは滸にじいさんから聞いたことと自分の考えを話した。

滸が考察している間にルパンはじいさんに肩車して天井(4m程上にある)の金網を切りはじめた。

ルパンの限界が来て滸があることに気がついた時、突然上からバリバリという音がして、ルパンの肩の重さは瞬時に消えた。




「ルパン!その人を逃がしちゃダメです!」

「なんだって?」

「助かったよ、じゃあな」




じいさんはそのまま金網の向こうへと姿を消してしまい、時折「ひぃーっ」と悲鳴を上げるものの、その後も這う音が聞こえるから罠に引っ掛かったわけではないようだ。




「だから言ったじゃないですか…
あの人の話にはおかしいところがいくつかあります」

「一体なんなんだ?」

「まず、こんな牢獄に五年間閉じ込められてるっていうのになぜ生きてるんですか?」

「は?」

「ここに人が来た気配は滅法ありません。

見てください、この扉はこちら側に引いて開けるもの。
なら、わんやルパンがここに入れられる時にここに溜まった埃は壁に追いやられて無くなるはずなんです。
なのに変わったところなんてなにもない。

どこか別の所から入れられたということです」

「…確かに滸の言う通りだ」

「それに、ここを開けていないということはあの囚人に食を与えていないということ。
五年間も生き延びられるわけがないじゃないですか」




滸の言葉にルパンは何度も頷いた。
ごもっとも過ぎて何も言えないのだ。




「…炯、聞こえますか」

『Yes!
無事で良かったよ』

「今回も作戦変更です。
貴方と喧嘩する演技も楽しかったですが、本業の方が楽しいですからね」

『あは、そうだね!』

「なので、不二子との連携は取り消しです。
五右エ門が来るのを待っていてください」

『Yes,ser(イエッサー)』




さて、これからどうなることやら………







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