Ryo’s Room

□血まみれのシンデレラ
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ある街に女の子がすんでいました。どこにでもいる、ふつうの女の子でした。
めだたなくておとなしい子でしたが、よく見るとかわいい女の子でした。
お兄さんは妹思いでしたが、お父さんとお母さんは女の子は家をつげないし、
この子には才能がなにもないといってかわいがってくれませんでした。
女の子は、泣きました。悲しかったのです。かわいがってほしくて、
とてもがんばりました。でも、女の子は上手にできませんでした。
女の子は、悲しくて哀しくていっぱい泣きました。

女の子とそのお兄さんは、お化けがみえました。
お父さんとお母さんは、それを気味悪がりました。
ある日、お兄さんはお化けに襲われました。女の子はお兄さんを助けたくて、
死の国の王様と女王様から力をもらいました。自分の声と引きかえに。
女の子は、お化けを燃やしました。
それを見たお母さんは、女の子を「バケモノ」とののしりました。

それから、女の子はかわってしまいました。
ひとりで遊び、物を言わず、笑ったり泣いたりしなくなりました。
そして、まるで男の子のようになりました。虫やどうぶつを殺すように
なり、たくさんの人を殺すことを夢みていつもねむるようになりました。
女の子は、ゆがんでしまったのです。
たくさんの人を憎み、呪い、死を願い、殺すことを求めるようになりました。

そのころ、お母さんはときどき夢をみるようになりました。
ぞっとするような、とてもこわい夢をみるのです。いつも同じ夢です。
なにもみえない闇の中で、大きくてぴかぴか光る刃物を持った女の子がずっと追い
かけてくるのです。転んでしまったお母さんを、女の子は刃物でぶすぶす刺します。
真っ赤な血がどくどく出てきます。あまりの痛さに、お母さんは悲鳴をあげました。
お母さんは息もたえだえになりながら、こう言います。
「何故私を殺そうとするの?」
女の子は笑って、こう言いました。
「お前が嫌いだからだよ」
女の子がお母さんに刃物を振り下ろして、夢はおわります。

女の子は、いろいろなものが無くていろいろなものを失いました。
男の子のようになってから、いろいろなものを手に入れました。
けれど、女の子はきれいなシンデレラになることはできません。
だれかを助ける、すてきな王子様にもなれません。
女の子はずっと悲劇のお姫様―――血まみれのシンデレラのままなのです。

女の子はグレーテルと同じように、お兄さんを助けるために殺しました。
人魚姫と同じで、自分の本当の声を奪われて。
けれども、白雪姫のようにお母さんに捨てられてしまいました。
シンデレラは、王子様に会えるほどきれいではありませんでした。
灰をかぶってはいないけれど、血まみれなのです。

女の子は、赤ずきんというにはあまりにもこわくなりました。狼を見つけると、
おばあさんのことなんて考えずに狩人より怖い方法で殺すのです。

女の子は、真っ赤なシンデレラなのです。

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