Ryo’s Room

□飛び立つ鴉、墜ちゆく鳩、鳥籠の雲雀
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間宮桃子の自室に飾られた、フォトスタンドに入った写真。
シンプルなデザインの銀色のフレームに囲まれた、今年の四月に撮られた写真。
春の陽射しに満開の桜が白く輝き、その下に四人の中学生が存在していた。
右端にはピースをして笑う、ネクタイのない薄緑色のブレザーの眼鏡の少女。
その左隣に、紺色のセーラー服を着てにやりと微笑む自分の姿が写っている。
左端には、袖に白いラインが入った黒い学生服を着た少年がにっこり笑っている。
右隣で平凡な黒い学生服を着た、この中で最も背の高い少年が微笑を浮かべていた。

運動部の少年らしい浅黒い肌。細身ながら適度に筋肉のついた体。直線的な長い脚。
短く切った墨色の髪。腫れぼったさが全くない一重瞼。少し節の高い、細長い指。
髪と同じ色の瞳。世界的にはやや低めの鼻と薄い唇からなる、日本的な顔立ち。
あのモナリザを思わせる、はにかんだ様な穏やかな微笑み。彼独特のもの。

この少年は今、学校には通っていない。家にもいない。病院にいるのだ。
彼は今、精神的な理由と身体的な理由によって入院していた。
いじめによって不登校になり、体が衰弱して倒れ、入院したのだ。
心臓の弁にも穴が開き、手術をしなければならないほどだった彼の病室に、
この写真に写ったメンバーは家族よりも早く、一番最初に駆けつけた。
それ程、彼の事が大切だったから。
だから皆、毎週土曜か日曜には必ず見舞いに行く。
九月の木曜日、桃子はその少年―――斉藤正斗の事を考えていた。
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