駄文置き場

□軍師の午睡
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次の朝、火はやっと消えた。


店も、家も…全部燃やし尽くしてな。



誰も助からなかった。


親父も、お袋も、兄貴も、姉貴達も…まだ小さかった弟も…みんな死んだ。



バレンヌ軍の調べで、火を点けられた事がわかって、俺は……あの時の客を思い出した。


妙な雰囲気のあの客のことを、俺が知らせていたら、家族は死ななくてすんだんじゃないか…


ずいぶん自分も責めた


死んで済むなら、そうしようかとも思った。


だけどな…

ある時俺は、ふと思った。

俺が死んだら、お袋は怒るだろうな…って。


腹痛めて産んでくれて、苦労して育ててくれたんだ…そんな親の想いを無にするような、自分から命を断つような真似だけは……絶対にするべきじゃない…ってな。


そうなったら、俺にはもう、犯人を探すことしか見えなくなった。


アバロンに行って、図書館の雑用で雇ってもらって、沢山の文献見たり、調べたり、休みにはあちこち聞き込みに行って、5年かかってやっと見つけた。


ティファールに住んでた金持ちの息子だったよ…

親に勘当されて、ふらふらしてたんだが遊ぶ金が欲しかったらしい。多少金がありそうで、かといって名もない、大事にならなさそうな家を狙ったんだと。

ちょっと火をつけて、家族が慌ててるどさくさに紛れて金を盗むつもりだったらしいが、思ったより火の回りが早くて、どうにもならんかったんだと。住んでた人間まで殺すつもりはなかったらしい。



……自分の親の方がよっぽど金持ってるってのにな…




全く……嫌な夢を見たもんだ…
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