駄文置き場

□箱庭の姫君
3ページ/7ページ



昼の鐘


リリィが様子を見に来たことから、父と母もくるであろうと想定したセレンは、正午の鐘より早く部屋を出て、中庭のバラ園に向かった。彼女が秘密基地と名付けたその場所は、未だだれにも見つかっていない。
まだ両親に合う気分にはなれなかった。





バラ園に入ると、秘密基地まで足早に歩く。
そうして、人がいないのを確認してから、ゆっくりふてくされようと思っていたのに。


「おや、誰にも見つからないと思っていたのに」
まるで自分が先に見つけたような言い方で、当然のようにそこにいた男。
「おまえは誰?」
と聞こうとして、今まで堪えてきた涙が一滴、驚いた拍子に頬に伝った。
「う…うわあーん…!」突然鼻水垂らして泣き始めた幼い姫を、男はギョッとして宥めるのだった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ