駄文置き場

□いつわりの女神
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「エメラルド班長。第8班、全員の無事を確認、負傷者の治療はほぼ完了しました」


ルドン高原のアクア湖付近、割と見通しの良い丘からは、アバロン宮殿を臨むことができた。


入団から半年…

ナゼール氷原遠征軍に従軍はしてきた俺たちは、そこでモンスターの群れに襲われた。

病身の皇帝陛下にかわり、軍を率いたハンニバル将軍の機転により、死者さえ出さなかったものの、一刻以上その場に留まり、治療や隊列を編成しなおす大事になった。



彼女は、治療していた衛兵から顔をあげると、頷き微笑んだ。


「了解しました。では、引き続き重傷者の移送準備を…隊列が整い次第、ナゼール方面へ出発するでしょう。私はもう少しこの方の治療をして行きます…頼みましたよ。タウラス副班長」


俺は副班長になっていた。


自分が一番意外だった。


俺のどこにそんな力があったのか…
この半年で、俺には自分でわかるほどに力がついていた。



俺は元々水の精霊の加護を示す紋章をもって生まれた。

だから、水の術法にこだわって、そこを伸ばす努力をした。


ところが、あるとき彼女、エメラルド班長は、俺に言った。



「あなたは…風の精霊のお導きにより、この世に生を受けた方…もっと風の術法を身に付けてごらんなさい」


そんなバカなと思った。


俺には、風の精霊の加護がない。
加護がない人間には、すぐに限界が見えてくるはずなのだから。



俺は、家に帰ったおり、両親にその話をした。
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