負の遺産

□王宮の花火
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序章

 その夜は、バレンヌ帝国の首都アバロン宮殿及びその城下をあげての大祭だった。とりどりの花火が揚がり、様々な楽器が演奏され、様々な声で人々は国歌を歌い、この国の民謡を歌う。
 市が立っている場所では、豊かなオレオン海の幸を売るもの、きつくて有名な地酒を売るもの、装飾品を売るもの等が盛んに呼び込みをしている。喧噪につられて思わず買わなくて良いものまで買ってしまう者、子供にねだられ仕方なしに串を一本買ってやる者・・。 喧噪を抜けた城下町の中心では赤々と篝火が燃えて、何組もの男女が愛を語らい、今夜の相手を捜している。

 バレンヌ帝国歴1838年雨の月16日
 後に事実上のバレンヌ最後の皇帝となり、”英雄”と讃えられる女帝セ レンは、この日17才の誕生日を迎えていた。
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