詩人の詩
□組曲《皇帝》前奏曲
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世界を治めていたのは、ばじめ、人間だった。
人間達は、数百年を超える寿命を持ち、圧倒的な数と知識で、大陸を牛耳っていた。
気の遠くなるような年月の後、人間達は、自分たちと姿を同じくする、別の人間の存在を確認する。
それらは、彼らと同じ外見、構造をもちながら、一つだけ決定的な違いを有していた。
彼らの寿命は、およそ百年に満たないのである。
人間達は、自らを長命種、彼らを短命種と呼んで区別し、短命種を自らの下において支配した。
しばらくは平穏が保たれた。
長命種は、自ら争いを起こしたりはしなかったし、短命種も、位は下だが、生活は保証されていたし、互いに持ちつ持たれつ暮らしていた。
しかし、次第に長命種は、短命種を疎んじるようになっていった。
その短い寿命を目の当たりにし続けた長命種は、死を極端に怖れるようになったのである。
学識高いもの達は、日夜不死の研究に明け暮れた。
なんとか死を免れたい
無限の年月を生きたい
何人もの研究者が、寿命に倒れ、後進に遺志を託し、ある日、それは完成した。
それは瞬く間に長命種の間に浸透し、長命種を確実に不死に近付けた。
それがなんなのかは後に明らかにするとして…
時間をすすめる。
今より三千年の昔
大陸は、新種の生物によって脅かされることになる。
動植物や、無機質の突然変異種…
モンスターである。
長命種は、元々戦闘向きではなく、他人を頼るきらいのある種族である。
自ら剣を取り、或いは術法を用いて戦うことなど、考えもしない。
それでも、何とか自警団を組織し、わずかながら抵抗を続けてきたが、モンスターの勢いは止まることを知らず、長命種は危機に瀕していた。
それを救ったのが、たった七人の長命種であった。
七人の長・ワグナス
その親友・ノエル
ノエルの妹・ロックブーケワグナスの従兄・スービエ怪力を誇る・ダンターグ
人形使い・ボクオーン
死を司る・クジンシー
彼らは、自ら武器を取り、モンスターに立ち向かった。卓越した能力を持った七人は、まさに鬼神の如き活躍で、仲間の窮地を救った。
彼らは“七英雄”と呼ばれ、人々の称賛を受け、長命種社会にも、また平穏が訪れた。
これほどの栄華を誇った長命種であるが、七英雄の活躍より僅かに後、世界を襲った大規模な気象変動を境に、大陸から姿を消した。
それは七英雄も例外ではなく…
残された短命種は、主人の居なくなった大陸で独自に生活をはじめた。
国を興し、村を作り、畑を耕し、家族を作り、子孫を増やした。
短命種は、働くことを知っていたので、大陸が蘇るのに時間はかからなかった。
現在の大陸諸国の大本の話であるが、識るものは少ない。
歴史を編纂するものがいなかったのか、意図的に隠されたのかは不明だが、長命種の記述がされた歴史書は、まずどこにもない。
人々が口にするのは決まって
“七英雄の伝説”
これに終始するのである。