詩人の詩
□組曲《皇帝》第四楽章
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見下ろした空はただ蒼く
小さく眼下に広がる木々や山並は、沁みるように鮮やかだった。
「見つからないものだな…目線が高すぎるのも考えものだ」
ゆっくりとひとりごち、長衣の裾がずれる僅かな音とともに、男は振り返った。
整った秀麗な眉目、高く通った鼻筋、薄く笑いを浮かべた口元の鮮やかさは、並みの女性のそれよりも艶かしい。
「時々…わからなくなるよ…こうして探しているものが…一体なんだったか」
「復讐のため…ではなかったのか?」
重ねられた声は低く、包み込むように深い。
「そうだ。復讐だ…私達を裏切り、利用した…あの恥知らずの輩…奴らに…」
言葉は続かない。
男の真意を理解しているかのように、傍らの男は地上を指差した。
「あのような滝が…故郷にもあったな…お前と…私…それに妹と…あそこで技を磨いたな…」
肌をなぶる風は、故郷のそれではない。
木々も、海も…
「もしかしたら、この空だけは…」
遠く遥かな故郷まで、続いているのだろうか…
蒼く透き通った空の彼方に、気持ちよさげに鳶が舞い上がった。