駄文置き場
□いつわりの女神
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ライブラ兄貴が宮廷魔術士団に入団してから五年半…
俺は遅ればせながら、魔術士団に入団した。
年齢的にはさほど変わらない兄弟だが、俺はガキの頃に病気をして、しばらく安静が必要だった。だから、士官学校への入学が少し遅れ、士官が遅れた。
その士官学校を出て、すぐに配属となった部隊には、三人の上官がいた。
「ライブラ室長の弟か!」
悪い意味じゃない。
妬みや皮肉でもない。
会う人間がみんなそう言って、俺を表した。
兄貴が、あまりに優秀すぎたからだ。
身内びいきでもなんでもない。事実だ。
兄貴は頭がいい。
そればかりか、術法の力にも優れ、独創力もある。
言ってみれば天才なのだ。
俺は、兄貴の弟であることに、いつも引け目を感じていた。
同時に、それを諦めもしていた。
兄貴は天才。
俺は凡人。
どうあがいても、それは変わらぬ事実なのだと。
「あなたは、その名のとおりの雄々しき方ね」
たった一人
彼女だけが、兄貴という眼鏡を通さずに俺を見ていた。
澄みきった、夜空のような瞳を、美しいと思った。