駄文置き場

□ジルフェ 〜白〜
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こうして会うのも、もう何度目になるのか…。


屈強の勇士は、目の前のイロリナ川に足を浸す少女をぼんやり眺めながら、彼女と出会ってから何度目になるか、数えきれないほどのため息をついた。




毎度、言うまでもないが、許されない恋に身を焦がした自分たちに、頻繁に逢瀬を繰り返すことは難しく、また、そんな身分でもなかった。


せいぜい月に一度…


それも、彼女の自室に赴いての逢瀬。

他愛もない話しに始まって、時に激論を繰り広げ、気分を損ねてみたり、泣かせてしまったり…


そのうち、自然に…


まあ、そういう雰囲気になって…


別の意味で彼女を啼かせてから帰途につくのが常となっていた。




だから、こんな風に、外で彼女とあえる日は貴重だった。




このまま、水遊びで一日が過ぎてしまっても、特に異論はない。

別に彼女と床を共にするのが目的で会っているのではないのだから。



おとぎ話の姫君か、硝子の棚に飾る人形か、と思うほどの美しい姫だ。
彼女を思うままにしたい、と思う人間も多いにちがいない。


実際、酒場で周りの話しに耳を傾けていると、
『彼女を抱いて、明けの一番鳥の声を聞けたなら、首を跳ねられても構わない』という、とんでもない発言を耳にしたことがある。

最も、こんなのは領内でも治安の悪い、モーベルムのならず者あたりが口にしていることで、普通の、常識ある人間はそんなことは言わない。
せいぜい、彼女の美貌を称え、けして手に入らない至宝に想いを馳せるのみである。


彼は、腰かけていた岩の上で、足を組み換えた。
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