更に駄文な書庫

□銀月幻想曲
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ああ…



見覚えがあるな



と、セレンは目の前に広がるバレンヌの大地を見渡した。




それは鮮明な記憶ではないが、もっと幼いときに、父に抱かれてこの大地を馬で駆けたことがある。



暖かく、大きな父の手に包まれて、幸せで満ち足りた思いで一杯だったはずだ。



「あの方向に、みんな待っている」



場所は名言せず、シャールカーンは馬の首を巡らせた。



「わかった…案内を頼む」


馬が嘶き、蹄が大地を蹴った。





「母上…」




小さな呟きは、風にのって消えた。
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