名作劇場
□At home
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歴代バレンヌ皇帝の中で 賢帝の一人に数えられる第7代・アガタ帝。
後世の帝国史の上では、 彼女の治世を支えた幾人かの家臣・武将の名があるが、
その中で意外に知名度の高い一人の武将がいる。
軽装歩兵 ハリー。
幼年学校卒業後 一貫して軍人の道を進み、アガタ帝治世最大の戦い“ヤウダ戦役”においては 先陣を切って浮遊城に斬り込むなど勇猛ぶりを発揮。
以後 第2歩兵軍団長等の要職を歴任する。
これはそのハリーと、彼が終生愛し抜いた妻サラとの夫婦生活の一面を描いたものである――――
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―――帝都アバロン中心部
ほんの数年前、ここに以前から建っていた広めの庭園付きの古い洋館を買い取り、これに手を加えて移り住んだ一組の夫婦がいた。
言うまでもない、皇帝アガタの仲立ちで無事結婚にまで漕ぎ着けたハリーとサラの夫婦である。
レンガ造りの建物自体はそこまで大きい豪邸というわけではなく、周りに林立する他の屋敷に比べたらむしろ小さいと言っていい。
だが庭園については、手入れが不十分なままだったとはいえ これからの整備如何では素晴らしい景観を提供してくれる下地は備えている。
そしてその夜、この屋敷では久しぶりに主人の姿を見かけることができた。
半月以上前から 北ロンギットのメッシナ鉱山を襲ったモンスター討伐を終えたハリーが その任務を終えて 無事戻ってきていたのである。
その晩はハリーとサラの夫婦水入らずの夕食となり、
久方ぶりに笑い声が邸内に響いていた。
それが終わって夜も更け、二人の“舞台”は寝室へと移る。
ダブルベットの上で共に裸になり横たわる二人。
“ あっ・・・あっ・・アンッ・・・・”
もし寝室のドアに聞き耳をたてて中の様子を伺う者がいたとすれば、その者はドア越しに中から聞こえるサラの感極まった、普段からは想像できない“甘い声”と、共に絡み合い愛を確かめあう二人の“熱気”を全身に感じることができたであろう。
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