詩人の詩
□組曲《皇帝》第一楽章
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とりどりの薔薇が咲き乱れる、城の中庭。
それを見下ろす位置にある自室にて、フランクリン皇帝は眉を寄せていた。
后、ジェシカが好んで育てた、麗しき薔薇の園を見下ろしているその表情は、やや曇りがちであった。
表情のみでなく、その顔色も、やや土気色をして、五十代半ばにしては、やややつれた面持ちが、より老いた印象を与えた。
衛兵が、扉の外から客の訪ないを告げた。
「通してくれ」
擦れたような、やや詰まった声が許可を告げると、しばらく間を置いて、開いた扉から初老の紳士が入ってきた。
臣下の礼をとると、紳士は驚いたように目を開き
「お休みにならなくてよろしいのですか…お加減は…」
フランクリンは小さく笑って言った。
「まあまあだ…」
フランクリンの肩にはガウンが羽織られており、衣服は寝間着だった。
皇帝フランクリンは、病の床にあるのだった。