駄文置き場

□英雄ポロネーズ
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スービエ


我らが故郷の村が、モンスターによって脅かされたのは、もう気の遠くなるような昔の話だ。

長命種…つまり俺たち種族はは戦うことを良しとしなかった。
だが、ただ黙ってやられるのを待っているだけでは、我ら人間という種の危機だ。
最初に武器を取り立ち上がったのは、俺の従兄弟のワグナス、それに、その友人のノエルだった。それに俺が加わり、ノエルの妹ロックブーケが、そして、腕試しの名目で喧嘩っ早いダンターグが加わり、術法ならば役に立てると、ボクオーン老人が腰を上げ、最後に村はずれで女衒をしているクジンシーが何の気まぐれか、仲間になった。

俺たちは、それこそ力の限り戦った。何度となく命の危機にも陥ったが、生き延びて、また戦った。

戦い続けるうちに、俺たちは限界を感じ始めた。モンスターがより強力に、強大になりつつあったのだ。
あちらとしても、今まで雑魚に任せていた力のある奴らが、人間手強しとみて御自らお出ましになったってことだろう。

俺の頭の中にちらほらと死の陰がちらついた。けして短い人生だったとは言わないが、未練がないといえば嘘になる。



あいつが俺のところへきて、神妙な面持ちで話し始めたのは、よく晴れた日の午後だった。

「モンスターのちからを取り入れる!?」
俺は驚愕した。
「そんなことが許されるのか」
ワグナスは言った。
「もはや我らも人間の肉体での限界にきている。新たに力を付けようと鍛錬に励んでも、これ以上の伸びは期待できない。だが、同化の法を応用して、モンスターのちからを取り入れたなら…」
風が、かたかたと調度品を揺らした。
「既にノエルには話した」
「どうするって?」
蒼い双眸が俺をじっと見つめた後、奴は頷いた。ノエルは力を取り入れることにしたのだ。
「まあ、あいつならそうかもな。奴さんにゃ可愛い妹がいるしな。そのためなら…」
さて、俺はどうしようか。
恐ろしさはある。誰もしたことのないことを試すのだ。当たり前だろう。それからもう一つ。

同族達は力をつけた自分達を受け入れるだろうか…。ただでさえ臆病で、新しいことや外からの知識は排除したい人間の集まりなのだ。ワグナスは生真面目で良くも悪くも純粋だから、そうは考えないかもしれないが…。



そうだな。その時あいつ等が絶望した時に、俺も運命を背負ってやるか。ここまで加担したんだ。今更やらないもないだろう。


俺はできるだけ明るく言った。
「そうだな。俺も乗ろう」



数十年後
俺たちは、思いもしない方法で奴らから裏切られることになる。
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