駄文置き場

□砂漠の銀月
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「熱心ね、フランクリンは」
親友の元軽装歩兵イングリットが肩をたたく。彼女は既に結婚して、一児の母である。子供の名はヘクターと言うのだが、それはまた別の話。

「まだ縛られたくないのよ…」
ジェシカが輝く金髪をかきあげるのを見て、イングリットは笑った。
「バレンヌの薔薇はワガママだこと」
ジェシカより3才年上の彼女は、すっかり家庭の主婦らしく、買い物籠を下げていた。
ジェシカにはそれが不思議でたまらないのだった。六年前まで共に剣を振るい、互いに背中を預けた彼女が、家事や育児に追われ、細身の体がふっくらと母親の体型になっていったのを、複雑な気持ちでみていた。
自分はいつまでも戦場にいたい…まだまだ家庭に縛られるのは嫌だ。

「ワガママで結構よ。私はまだまだ自由でいたいの…それより私、明日からメルー砂漠へ行ってくるの」
今度はイングリットが目を丸くする番だった。
「またなにしに…」
「表向きは安全確認。領地外の偵察てとこかしら」
「じゃ裏側は?」
ジェシカはにっこり笑った。
「もちろん、強い奴がいないか捜すのよ!砂漠の自警団に未知のモンスター…ステップ経由で行くから、ワイリンガ湖の海の主にも会えるかも!」イングリットは、脳天気な親友の言葉に天を仰いだ。
バレンヌの青空を、きらめく太陽が照らし続けていた。
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