更に駄文な書庫
□銀月狂詩曲
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「あの男は?」
詰所に入ると、シャールカーンは冷たいレモン水を勧めた。
そう喉が渇いていたわけではなかったが、一気にそれを流し込むと、やや乱暴にグラスを置いた。
「別れてきたのか」
「別れるも何も…そんな仲じゃなかった。最初から」
真似事だけはしてきたが…
シャールカーンは人の悪い笑みを浮かべて、小さな肩を抱き寄せた。
「この間言ったこと…芝居じゃないぜ。わりと本気だったんだ…」
暗殺者に狙われかけた時に、とっさに身を隠そうとして口付けた…あの時のことだ。
「あいつに遠慮する必要は…ないのかな?」
そんなことはどうでもよかった。
ノエルでないなら誰でも同じだ。
「好きにすればいいよ」
忘れられるものなら
忘れ去りたかった。