更に駄文な書庫

□銀月狂詩曲
2ページ/25ページ



「あの男は?」

詰所に入ると、シャールカーンは冷たいレモン水を勧めた。

そう喉が渇いていたわけではなかったが、一気にそれを流し込むと、やや乱暴にグラスを置いた。

「別れてきたのか」

「別れるも何も…そんな仲じゃなかった。最初から」
真似事だけはしてきたが…
シャールカーンは人の悪い笑みを浮かべて、小さな肩を抱き寄せた。

「この間言ったこと…芝居じゃないぜ。わりと本気だったんだ…」

暗殺者に狙われかけた時に、とっさに身を隠そうとして口付けた…あの時のことだ。

「あいつに遠慮する必要は…ないのかな?」

そんなことはどうでもよかった。
ノエルでないなら誰でも同じだ。

「好きにすればいいよ」

忘れられるものなら

忘れ去りたかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ