企画@
□18・あくまで偶然
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君は、僕との出会いは運命だと言って笑った。
空っぽの僕が、君にどんなものを与えたんだろう。
どんなものをもらったら、人は君みたいな笑顔になれるんだろう。
僕にはわからなかった。
「僕に運命なんてない」
「どうして?」
「僕の存在は預言にはないから」
求められるままに、僕は答えた。
僕の出生や存在理由を、君に知ってもらった。
君の笑顔が曇った理由を、僕は知ったつもりでいた。
「だから、君と僕との出会いは、ただの偶然だ」
「シンク」
どうせ、そんなことない、とか言うに決まっている。根拠のない弁明。僕にとっては汚い言葉が待っている。そう思っていた。
でも、君は違った。
「どうしてそんなに悲しそうに言うの?」
君は僕の顔をみて、悲しんでくれていた。
そして僕の手をとり――また、そっと微笑んだ。
「偶然だからって、無意味じゃないんだよ?」
僕は自分が今どんな顔をしてるかなんて、見当もつかなかった。
泣いて喜ぶべきか、笑って応じるべきか……表情なんて、意識したことがなかった。
でも、どうしたら君の優しい意志にまっすぐ応えられるのかな。
どれが一番なのかな。
そればっかりが頭の中をまわっていた。
「運命なら、信じ合えばいい。偶然なら…笑い合えばいいじゃない」
なんて返したらいいか、わからなくなる。
君に言いたいことは1つだけど、君のキレイな唇から紡がれる言葉に見合うものがみつからない。
もどかしいな。
「そしてわたしはこの偶然を愛するわ。シンクは?」
「…僕は……」
――ありがとう。
僕も一緒に愛していいかな。
君の隣で、君にあげる言葉を見つけたいんだ。
あくまで偶然
その存在を有と認めること。
それが、僕の欲しかったモノ。