企画@

□3・追いかけてよ
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追いかけてよ

私の目の前にいるこの人は、私の仕事の上司だ。
長身で細くて、肌が白く蜂蜜色の綺麗なサラサラの髪。眼鏡の奥には赤い瞳。そしていつもの嫌味ったらしい笑顔。
私が大佐の補佐兼からかいの対象となってからもう一年。最初は軍の中でも…いや、世界中から死霊使いと恐れられている人の補佐なんてと思っていたけど、からかわれているうちに段々と惹かれていった。

少しでも大佐に近付きたくて、少しでも釣り合いたくて毎日必死だった。いつも以上に頑張っている自分は俗に言う“恋する乙女”なんだとおもった。いつも私が大佐を追いかけてばかりだ。たまには大佐が私を追いかけてはくれないかと思ったりする。…でもそんなのは私のわがままだ。
「…どうしました?ぶつぶつと独り言を言って。」
「へ?な、何でもないですよ。少し考え事をしていただけです。」
大佐はそうですかなんて言いながら、私の顔を覗いてきた。あまりの顔の近さに心臓がビックリしている。

「た、大佐…。」
「何でしょう?」
「顔…近いです。」
「そうですか?」
中々離れてくれない大佐は、にこやかに笑った。

そして、こんな事を言い出した。

「追いかけてますよ。いつも…。」
「…へ?」
「名無しさんが気付いてないだけですよ。私も名無しさんを追いかけていますよ。」
「…本当ですか?」
大佐は私を腕の中に閉じ込めると、耳元で囁いた。



「本当ですよ。お望みあらば、いつまでも追いかけて差し上げますよ。」

そう言って大佐は、私に優しいキスをしてくれた。

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