セイナー伝戦記

□選ばれし者
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1話 もう一つの世界



二人の少年と少女は同じような夢を見た。
二人はそれぞれ違う神殿にいた。
少年は【光の剣】を抜き、少女は【光の杖】を抜いた。
その時、二人は聖なる光に包まれた。


「わぁっっ!!!」
少年は飛び起きた。そこは、自分の部屋のベットの上。
「夢かぁ・・・・・・・・」
少年は深呼吸をする。
黒髪黒瞳の170弱の背丈。歳は15。東名美高校に通う1年生。
少年の名は、波崎彼方(なみざき かなた)といった。
「ん?」
彼方は枕元においてある目覚まし時計を見た。
「・・・・・・・・・・・・・遅刻するっっ!!!」
ドタバタと、家中を走り回り始めた彼方。
「行ってきまーすぅー!!」



東名美高校   1−U
赤茶色の髪にオレンジの瞳の少女――実鈴隆香(みれい りゅうか)は、読書をしながら、後ろの席の幼馴染みの登校を待っていた。
ダダダダダッッ!
「つ・・・・づーがーれーだぁぁー」
隆香が振り向くと、そこには幼馴染みの彼方が机で伸びている姿がある。
「おーおー。またギリギリかー。」
「いつもいつも・・・ちょっとは早起きした方がいいよ。」
伸びている彼方に近寄ってきたのは、元気な少年―優雅利薫(ゆうがり かおる)とポニーテールの少女―新海静羅(しんかい せいら)だった。
「ん?あはははぁ〜」
「笑って、誤魔化ところじゃないよ。」
隆香が彼方に言う。
その時、
「皆ーおはよう。」
担任の先生が教室に入ってきた。
薫と静羅は自分の席へと帰った。
その後、朝の簡単なホームルームがあった。
「ねぇ。彼方。」
隆香は後ろの席の彼方を呼んだ。
「何?隆香?」
「今日、変な夢見なかった?」
「変な夢?・・・・・・・・また見たよ。あの夢。」
「そうか・・・・・・なんで私達。同じような夢を見るんだろうね・・・・」
「そうだね。しかも、毎回毎回同じ。」
「何か意味があるのかな?」
「どうだろ?」
「はぁ・・・・でも、見たからって何も起こってないもんね。きっと今回も何もないよね。」
「うん。」



放課後
「ごめん、彼方っ!」
隆香が教室に急いで入ってきた。
「大丈夫だよぉ〜」
彼方はにこやかに対応。
「委員会が延びちゃってね。」
二人は教室を出た。


「疲れたぁ〜」
「何もしてないと思うけど・・・・」
「人間生きてりゃ、疲れるのさぁ!」
「はいはい。」
スタスタと馬鹿な事をしている彼方を、抜いて歩いて行く隆香。
「待ってよぉ〜―――――――――――っ!」
「―――っ!」
二人の動きが止まった。
「か・・・彼方・・・・今・・・・・」
「・・・う・・ん・・・なんか、変な感じがしたぁ・・・・・」
隆香は彼方の方に戻る。
「気のせい?」
「そうかなぁ?」
「そうよね。気のせいだよね。気のせい。」
「うん。」
「さっ、帰ろー」
隆香が振り返ったその瞬間。
「っ!!」「っ!!」
二人は目映い光に包まれた。




『忘れないで。思い出はあなたの心の中に・・・』
一人の幼い女の子が、歳には似合わず大人びた事を言う。
「うん。思い出は・・・・・心の中に・・・・・・・・」



「うっ・・・・・・・・」
彼方は見たことのない場所で倒れていた。
「ここは・・・・・・どこ・・・・・・?隆香・・・・・・・?」
辺りを見回す彼方。しかし、隆香の姿は何処にもなかった。ただし、あったのは大きく聳える神殿。
『夢の中と同じだ・・・・・・なんで?・・・・・それに・・・さっきの・・・』
彼方は、先に気絶したて時に見た光景を思い出した。
それは、彼方の過去であった。
両親と姉が亡くなった時に、姉にそっくりな少女と出会った時のだ。
今まで、その事は忘れていた。いや、特に思い出したりしなかっただけである。
しかし、今になってあの過去が見えたのは、何故であろうか。
「考えてる暇はないや・・・・」
彼方は立ち上がり、神殿と向き合う。
「もしかしたら、こん中に隆香もいるかもしれない。」
彼方は神殿の中へと入って行った。



神殿の中は暗い一本道であった。
「あっ・・・・・光・・・・・・・」
彼方は道の先に一転の光を見つけた。次第に足も速くなる。
そして、一つの部屋へ辿り着いた。
小さな階段があり、剣が差してあった。
『夢じゃぁ・・・・・・剣を抜いてた・・・・・』
彼方は階段を上り、剣の前に立った。
そして、剣を抜く。
「わぁっっ!!!」
彼方は聖なる光に包まれた。
そして、その光は神殿の外へ。
そして、世界中へ。
それと同時に、彼方がいる神殿と対等の場所でも、同じような光が現れた。



ある暗い部屋で、9人の人間が一つの水晶球を見ていた。
「この光は・・・・」
「【選ばれし者】が【光の剣】か【杖】を抜いたという証拠。」
「二つの光。ということは・・・・・・」
「武道国と魔道国。両方に【選ばれし者】が現れたって事ですね。」
「そういう事だ。」
「ならば・・・・・世界の戦乱を・・・・・」
「無くす事が・・・・可能に・・・・」
「ならば・・・・・此処に・・・・」
「幻獣界へ・・・・導かなければ・・・・・」
9人は口々に言った。
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