セイナー伝戦記

□選ばれし者
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5話 初めての戦場



わぁー!おぉー!わぁー!!おぉー!!
「始まった・・・」
彼方が呟く。自分より前方にいる武道国の兵が魔道国の兵と闘っていた。
「彼方様は初めてなので、余り無理なさらないように。」
蓮が彼方の横で剣を構えながら言う。
「わかった。一様、迷惑はかけないようにがんばるよ。」
「行け行けっ!!彼方っっ!フレフレっ!彼方っっ!!」
「うるさい!ランリンっ!!ってか、まだ戦ってないよっ〜!」
「気にしちゃダメっ!応援の練習だよっ〜!」
「彼方様。敵が来ました。私から離れないで下さい。」
「わかったっ!!」
蓮が走って行く。そして、彼方はその後を追いかけるように走った。
彼方達が戦っている、すぐ横の崖の上で、あの青年がいた。
「おーおーもう戦火が切って落とされてたかっ!!」
皮肉げな口調。だが、全てを見透かしているような鋭い眼。
青年は、その場から富凪の居場所を確かめる。
「あんな遠くに居やがる・・・」
その時、青年は何かに気付く。
「ん?あれは・・・・・・・・・・光の剣・・・」
彼方を上から見る。
「【選ばれし者】・・・・・・・やっぱり出したか・・・」
そして、視線を魔道国に向ける。
「今回は魔道国・・・・人数が少ないな・・・・・・・・・・・・あっちはいないな。【選ばれし者】は・・・」
実際に、敵の数は300人対200人。
圧倒的に、武道国の方が数を上まっている。



「うっ・・・」
彼方は戦っていた。もう何人殺したのだろう。
初めてとは思えないほどの腕だ。今までに、こんな才能があるなど思ってもいなかった。だが所詮。人を傷つける才能。開花する必要などないのだ。だが、今は戦争。必要な才能だ。仕方のない事。殺らねば殺られる。そういう世界なのだ。そう、彼方は自分に言い聞かせながら戦っていた。
そして、彼方と戦った者は一瞬驚く。
彼方が、【光の剣】を持っているからだ。【光の剣】。それは眩い聖なる光を放つ剣。誰もがわかるのだ。他の剣とは違うという事を。
「ふう〜ひと区切りついた・・・・・・・蓮っ!大丈夫っ?」
「大丈夫です!」
彼方に微笑みを向ける蓮。
「李譜じいは!?」
「同じくです。」
後方より杖を上げて返事をする李譜。
「ランリンはっ!?」
「ピンピンしてるよ〜!!心配してくれたの〜?」
「ムッ!今度から絶対心配しない!!」
「大人気ない・・・」
「うるさいっ!」
「彼方様!また、来ました!!」
「ようし!行くぞ〜!!」



「へぇ〜なかなかやるな〜【選ばれし者】。」
崖の上の青年は、彼方の動きを見て関心していた。次に、視線を富凪の方に向けた。
「そろそろ本題に入るか・・・・・・武道国は切れ者が多いからな・・・・少し手荒に行くか・・・・」
青年は、そこから勢いよく飛び降り、風を切るように大人数の武道国の兵の中を走って行った。
「ん?なんだ?」
武道国の兵が、青年が物凄い勢いで走ってくるのを発見する。
「し・・・侵入者だっっ!!」
一人の兵が叫んだ。
他の兵が通信機に向かって喋る。
「王っ!大変ですっっ!侵入者が物凄い勢いで、そちらに向かっていますっ!!!」
『なんだとっ!?なんとしても阻止しろっっ!!』
「はいっ!!」


富凪は少し慌てていた。魔道国の者が、凄い早さで此処まで来れるハズがない。と思っていた。
「うわぁっ!!」
富凪から数メートル離れたところで、人が叫んだ。
「どうしたっ!何事だっ!!」
富凪がそう叫んだ時だった。富凪の首に冷たい物が当たった。
その正体は―――剣。
さっきの青年である。
青ねずみ色の髪に、青く長いはちまきをし、それが髪の後ろでなびいている。服は、青い拳法。右手に剣を持って、それを富凪の首につけている。
その右手には、赤い小手がしてあった。
「なっ・・・何者・・・だ・・・・・?」
富凪は青ねずみ色の髪の青年を、視界の端で捕らえながら言う。
そして、富凪の言葉に反応した兵は、青ねずみ色の髪の青年に対して有利な位置に動こうとした。
「おっと・・・・動くな。今、お前らが動いたら・・・・・・・・・・・富凪は死ぬぜ。」
兵はその言葉により、動きを止める。
その時、富凪が青ねずみ色の髪の青年の手を見る。
そこには、赤い籠手がある。
「おっ・・・お前はっ・・・・まっ・・・・・まさかっ・・・」
「そう。そのまさかさ・・・」
「幻獣界の・・・武魔道士か・・・」
「ああ。」
「琥那美の命か・・・・」
「いや・・・・・・今回は、俺独自の判断で動いていたが。」
「そうか・・・・で、何用だ?」
「一つ聞きたいことがある。」
「聞く態度がなってないが?」
「武道国。このぐらいやんなきゃ、おとなしく人の話しも聞かないだろ?」
「ふん。・・・・・なんだ?」
「【選ばれし者】・・・・・・これからどうする気だ?」
「武道国の英雄として、我々が勝つように使う・・・」
「やっぱりな・・・しかしお前ら・・・・・・知らないのか?魔道国の事。」
「どういう事だ。」
「魔道国にも【選ばれし者】がいるって事だ。」
「っ!!・・・ま・・・・・魔道国にも?」
「そうだ。精々、計画が上手く行けるように、頑張るんだな・・・・・・」
青年は剣を下ろす。
「殺さんのか?」
「ああ。お前らとは違う。」
「それが、命取りになるぞ。」
「ふん・・・」
すると、富凪が手で合図する。
兵が青年に襲いかかる。
カキンッ!カキンッ!カキンッッッ!!
青年に襲いかかろうとした兵は、その場に倒れた。
「・・・・・・・・みねうちだ。だが、次はここまで手加減はしない。」
「くっ・・・・・・・・」
「では・・・・・」
次の瞬間。青ねずみ色の髪の青年は、走り去っていた。


そして、彼方の初めての戦いは終わった。
敵が250人いたうちの50人ほどは彼方と蓮が倒した。
そして戦いは終わり、魔道国には武道国にも【選ばれし者】がいるという事が知れ渡った。



青ねずみ色の髪の青年は、先の崖の上にいた。
「導くまでには・・・・・まだ早いな・・・・・・まずは、お互いの存在に気付いてからだ・・・」
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