セイナー伝戦記

□選ばれし者
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6話 二人の存在



「王っ!それは・・・・・・本当ですかっ!?」
武道国王室にて、蓮が叫んだ。それは、あの戦いの後であった。
「ああ・・・・・・魔道国にも【選ばれし者】がいる。」
「二人同時とは・・・・前代未聞の出来事ですね・・・・・」
蓮がしみじみと言う。
「しかし、何故王は、魔道国にも【選ばれし者】がいらっしゃると、ご存知なのですか?」
李譜が聞く。
「実は・・・先の戦闘の時、私のところに幻獣界の武魔道士が来たのだ。」
「「「「武魔道士がっ!?」」」」
彼方、蓮、李譜、ランリンは驚いた。
「君のことを聞きに来たのさ・・・」
「僕のこと?」
彼方は自分を指差し、首を傾げる。
「そうだ。」
「・・・・・・・・・」
「逃がしてしまったが・・・・・・奴はかなりの力を持っている。」
「王。特徴を教えていただけませんか?」
蓮が言う。
「ああ・・・・・青ねずみ色の髪の青年だった。青い長いハチマキをしていた。」
「そうですか。ありがとうございます。もしかしたら、何処かで会うかもしれませんから・・・」
「うむ。そうだな。とにかく、今回の勝利は君達のおかげだ。ゆっくり休みたまえ。」
「はっ」



幻獣界・王室
そこには、椀王と王妃・マリアと少女が一人いた。
「たーだーいーまぁー!!」
呑気な声は、あの青ねずみ色の髪の青年であった。
青ねずみ色の青年が王室に駆け込んで来た、その時だった。
バッコンッッ!!
「いってぇっっー!!」
王と王妃と共にいた少女は、王室に入ってきた青ねずみ色の髪の青年を無表情で殴ったのだ。しかも、何処からともなくフライパンを取り出し、フライパンで青ねずみ色の髪の青年の頭を殴ったのである。だが、あえて言おう。その音は清々しい音であった事を。
「いってぇっっー!!何しやがるっ!!!」
「何勝手に行動してるのっ!!この馬鹿っっ!!!」
「別にいいだろっ!!ちゃんと情報取ってきたんだからさぁ!!」
「そういう問題じゃないっ!!」
少女は、もう一度フライパンで殴ろうとする。しかし、
ヒョイッ、と避ける青ねずみ色の髪の青年。
「やめろ・・・・・これ以上頭が悪くなったらどうするんだっ!!」
「心配するな!それ以上悪くならないからっ!!」
「ひっ・・・・・酷いっ!!」
その光景を、ニコニコしながら見ている、マリア王妃。オロオロしながら見ている、椀王。
「もういいから、説明してくれ・・・」
椀王が二人を止める。
「あっ・・・・はい。やっぱり富凪は【選ばれし者】を使って、勝利を納めようとしています。」
「やはりな・・・予想通りの答えだな。」
「最低ね。【選ばれし者】は人よ。戦争の道具なんかじゃないのに・・・」
少女が青ねずみ色の髪の青年の横で呟く。
「その通りだよな・・・・・だが、魔道国も同じ事考えてるんじゃないのか?」
青ねずみ色の髪の青年が言う。
「しかし、この調子ですと・・・・【選ばれし者】のお二人がお会いになるのも、そう遠くはありませんね。」
マリアが表情を変えずに言う。
「ああ、そうだな。・・・・・・・その時は頼むぞ。」
「はい。」
「はっ。」
少女と青ねずみ色の髪の青年は王室を出た。
「なぁ・・・・俺は最近思ったのだが・・・・・どうやって【選ばれし者】を此処に導くんだ?」
「・・・・・・・それもわかってなかったの?本当に馬鹿ね。まぁいいわ。遣いよ。遣いを使うの。」
「シューレンとトニルか?」
「そうよ。それ以外に誰がいて?」
「そうでした・・・」
「やっぱり馬鹿は馬鹿しか言わないのね。」
「バカバカいうなっ!」
「馬鹿なんだから仕方がないでしょ。それ以外に何かあるの?あるなら言ってみなさい。言ってもいいけど、私が納得するモノじゃないと許さないわよ。」
「・・・・・・・・ごめんなさい。ありません。ございません。絶対ございません・・・・・・」
「わかればいいのよ。」
「はぁ・・・・・・・」
無理だ。コイツに勝つなんて、俺は100年・・・いや、1万年経っても勝てない。このまま幻獣界にいる間、一生コイツに勝てる事なんてないのだろう。
青年はもう一度、ため息を吐いた。



「武道国にもいるの?【選ばれし者】が・・・」
「はい。」
隆香とアユナは部屋で話していた。
『彼方なのかな〜』
「会ってみたいなぁ〜」
「リューカ様!そ・・・・それはちょっと・・・」
「無理よねぇ〜」
『たぶん、彼方だと思う・・・』
隆香は、武道国の【選ばれし者】が彼方であってほしいと願った。
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