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□君と、鳥と、僕と。
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日差しが部屋の中へ、窓を通じて入ってきていた。窓の外に広がる空には鳥が何羽か、飛んでいるように見えた。つい、目で追ってしまう。
鳥は、いいな。空を飛べて、何処までも自由だ―――――――。
「いたっ!!」
ふと、おでこに小さな衝撃があった。それは、あまりに突飛なものだったので、目を瞑ってしまった。
「斉藤、おまえ、俺に勉強教えて欲しいとか言ってたくせに、よそ見すんな」
久々知の怒っている声が聞こえた。目を瞑ってしまったから、顔は見えなかったが、多分不満を露にした顔なのだろう。
目を開けて久々知の顔を見たら、やはりそんな顔だった。
「せんぱ〜〜い。ごめんなさい〜〜」
「……はぁ。別にいいよ。ちゃんと勉強すれば」
「せんぱい、きびし〜!!」
「おまっ、自分で勉強するって言ったんじゃないか!!」
「え〜〜〜、そうだっけ??」
「………!!おまえなぁ………」
先輩は美人だ。怒っている表情や、呆れている表情、全てが様になっている。俺は、先輩のくるくる変わる表情を見ていたかったのかもしれない。あまり興味のない(鳥には少し惹かれたが)景色なんか眺めて、彼の反応を見たかっただけだったのかもしれない。いや、きっとそうだ。なぜなら…
「せんぱ〜い」
「……なんだよ」
俺は、彼に惚れているのだ。
「今度、せんぱいの髪、トリートメントさせてよ。痛んでる髪なんて、せんぱいに似合わないよ」
「…………勉強が終わって、俺の気が向いたらな」
「え〜!!!!!でも、そんなことなら、俺、頑張っちゃお!!」
「現金なやつだな…。俺の髪の何がいいんだか」
違うよ、先輩。
確かに、先輩の髪はとても魅力的なんだ。でもそれより、俺はそれを口実にして先輩と一緒に居たいだけなんだ。
そんなタカ丸の心情を察したかのように、久々知の長い黒髪の一房が、彼の肩から滑り落ちた。
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