文章
□わたしとあなた
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最近は連戦だった。
アリティア、ましてや、エリス様のためとはいえ、最近の無理な行軍は、軍の士気を下げるだけでなく、指揮をとっているマルス王子にも影響していた。
それほど、マルス様自身焦っているのは僕にだって分かるが、逆にこの分だと効率が悪いし、王子が倒れたらおしまいだ、ということで、ジェイガン様から一日だけ、行軍を止めることになった。
それに、マルス様はしぶしぶ承諾し(士気の低下など言われると拒否など出来なかったようだ。マルス様はお優しい方であるから)、野営用のテントを立てている。それを見たジェイガンと一悶着あったのはここでは省略させてもらおう。
とにかく、テントは立ち、ジュリアン達などの偵察組を除いてはほとんどの人が近くの川で水を汲んだり、泳いだりしながらも休憩していた。
まぁ、僕はそれをちらりと見たに過ぎないのだけれど。なぜなら、今、僕を筆頭とする魔術師組は会議中なのであるから。
この会議の内容も省略させていただこう。とにかく僕が伝えたかったのは、皆が休憩している間にも僕のような隊長(少し語弊がある気もするが)には休む暇もない、ということだ。
ということなので、あるはずなのだが。
なにが悲しいやら、僕は今、大変困った状況にいる。
なぜか、王子が僕の膝で寝ているのだ!!
急に僕のテントに来たマルス様は、僕の「マルス様、なにかご用ですか?」という呼び掛けにも関わらず、立っていた僕を地面に座らせ、その座っている状態の僕の膝に、頭を乗せ、横向きに寝ているのだ。
普段ならば、「何してるんですか!退いてください!僕は疲れてるんです!」ぐらいは言えるだろうが、今日は言えなかった。
どうやら、本当に眠っている様だし、今彼に必要なのは表面的な友情ではなく、きっともっと深い…、深い、ものではないかと思ったからだ。
そして、それは僕が話しかけたりしたら、きっと壊れてしまう、そんな気がしたのだ。
マルス様の横顔をしげしげと見つめて、僕はそっと息を吐いた。
ただ、彼のために、忙しい自分の体力と太股を犠牲にしてやろう、そう思って。
→あとがき