『貴女と共に』
*骸甘ほのぼの夢*
冷たい風が曇り空の下にいる僕らの間を吹き抜ける。
僕の隣にいる彼女は、その白い手をさすりながら白い吐息を漏らす。
空から控えめな雪が降っていた。
「寒いね………」
「クフフ、そうですね。ついこの間まで猛暑なんて言われてたのが嘘みたいです。」
「季節の変わり目だもんね。風邪引かないようにしなきゃ。」
「貴女が風邪を引いたら、僕が付きっきりで看病しますよ。」
「本当?優しいのね骸は。」
「恋人である貴女にだけ、ですよ」
そう言って、僕は彼女の手を取った。
彼女の手は驚くほど冷たくて、僕はその手を今度は両手で包み込み優しくさすった。
風が吹こうが構いやしない。
「…少しはマシになりましたか?」
「うん…………ありがとう、暖かいよ。」
「クフフ、照れますね。」
彼女の微笑みを見て、僕は胸の奥がほんのり暖かくなるのを感じていた。
「………ねぇ、骸。」
「何ですか?」
「だいすき、だよ。」
「クフフ、僕もです。貴女を愛してます。」
「貴方と居るならどんな寒いところでも暖かいの。骸、愛してるわ骸。」
「おやおや、今日はずいぶん積極的ですね……とても素敵です。」
真っ赤になっている彼女にそう囁いて、僕は彼女を抱きしめた。
触れ合っている部分が暖かくて、思わず息をついた。
「僕はどこにも行きません。離ればなれなんて二度とごめんだ。暗く寒い空間に閉じ込められて、一人の貴女を抱きしめてやれないあの悔しさを、もう味わいたくありません…!!」
「む、くろ……っ」
「…だから貴女は安心して僕の隣に居てください。例えばそれが僕のエゴだとしても僕は……………………貴女と、在りたい。」
美しい瞳からとめどなく溢れる涙を、指でそっと拭ってやれば彼女はとても綺麗に笑った。
そして自分達が此処にいると確かめ合うように僕は彼女に愛を込めたキスをした。
吹き抜ける風の音と、先程より強まった雪が、僕達を祝福してくれている気がした。
『雪のベールを纏った貴女は、まるで花嫁だった。』