「出来ちゃった」

軽い金属音をたてながら少女がポツリと呟いた。
軽い驚嘆の(無論、軽い驚嘆という表現は間違っているが…)表情を浮かべた年老いた男が少女をちらと見てみると
向かいの席の彼女の手からはすでに所々傷だかシミだかがこびり付いた安っぽいティーカップが消えていて
真剣な眼差しで男のことを見据えていた。

「そうですか」

男がニンマリと笑った。
笑いながら砂糖を、向かいの少女よりは幾分か傷が少ない同じ安物に入れた。
泡のように。
溶けた。

「怒らないんだ?」

「命の誕生を怒る理由なんかない筈ですよ?」

「ふーん…」

「下ろすなんて言わないで下さいね…二人の子供なんですから」

そのセリフを聴いて今度は
少女が
ニンマリ笑った。








「実の娘を孕ませたっていうのに…お父さんって本当に変な人ね」

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