夢1
□素直になれよ
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たね様へ
<伊達政宗>
「年明け一番にお前の顔が見たかったから…目隠しして登校してきたぜ!honey!!」
「ふーんそう。すっごく嬉しい。あけおめことよろー」
「棒読みか!」
寒過ぎて頭でもイカれてしまったのだろうか。
黙っていればカッコイイのに、私の目の前のこのバカはそんな寒さなど意にも返さない様子ではっちゃけてる。
目隠し代わりに目元を隠すマフラーがなんだか痛い。
「そんなことないよ。だから離れて歩いて、半径10メートル以上あけて」
「遠い!!」
冷たい言葉に根性が折れたか、目隠しに使ってたマフラーで私の首を締め上げる政宗。
なんなんだ、こいつっ!
「ぐぁ…!アンタ、まだ頭ン中おめでたい訳っ!?勝手にテンション上げて勝手に怒るなっ!」
「あまりの冷たさに我を忘れちまった。Ahー、もうこりゃ力の加減が出来ねぇなぁ」
ぐぎぎぎ…!
と私の首回りのマフラーが更に締め付けられた。
馬鹿野郎っ死ぬっ!
「全く…こんな寒い中マフラー無しで出歩くなんて、お前くらいなモンだぜ」
呆れた顔して手を離した政宗は、白い息を吐いて私を見下ろしていた。
「忘れちゃったの!…だからって首を絞める!?新年早々やらかしてんじゃないわよ!」
「おー怖」
スタスタと先を歩く政宗が何だか憎たらしくて、軽くその尻を蹴飛ばしてやった。
ビクともしない奴が憎い。
「てんめェ…覚悟は出来てんだろうな?」
「マフラーのお返しよ」
フフンと胸を張れば、ぐしゃぐしゃと髪を乱された。
せっかく直した寝ぐせが復活したらどうしてくれる!?
「お返しはもっと色気のあるモンがい…、」
「この万年色魔が!触るな!」
「ぐぁっ…!」
スルリと回された腕を取ってあらぬ方向に曲げてやれば、政宗は思わず仰け反った。
ざまぁみろ。
「おい、気を付けて歩けよ。…ったく、ほんっっっとに、人の親切の分かンねぇ奴だなっ!」
分かってるって、ばか。
「だからって、くっつかなくていいっつーの」
短いスカートにマフラー無しの私。
どうせ、いらないお節介しようとしたんでしょ。寒そうだとかなんとか思ってさ。
「…分かってんのかよ」
「言われなくとも」
長い付き合いだ。
アンタの考えてる事なんてお見通し。
「だから、マフラー返さないわよ」
先に雪を踏みしめながら、滑らないように注意して歩く。
その背後から小さな笑い声が聞こえてきた。
「…なに」
「別に」
振り返らずにそう言うと、政宗の上機嫌な声が返ってきた。
「可愛い奴、と思っただけだ」
「…!だからっ、そういう事を…っ!」
言うなって言ってんの!
文句を言おうと振り返ると、ズルリと足がスリップした。
転ぶよりも先に、いつの間にか隣まで来ていたらしい政宗の胸の中へダイブした。
あったかい…。
政宗の香りだと気付いて慌てて顔を上げたら、目の前に端正な顔があって思わず固まる。
「っぶねぇな…だから気を付けろって言っただろ?」
「わ、わ、分かってるってばっ!!」
グイと身体を離して慌てて歩き出すけど、ふと思い出して立ち止まる。
「今度は何だ?」
ポケットに手を突っ込んで「さみぃ!」と言う政宗を振り返りながら、私はマフラーを握りしめた。
「…あ、ありがと!」
すると、意地の悪い笑みを浮かべた政宗も立ち止まっていて、一定の距離を保ったままでもよく通る声を出した。
「…何が?」
「い、色々!」
「何の事だかさっぱりだ」
ちゃんと言えよ、とニヤリと笑う政宗に、私はグッと唇を噛みしめて睨みつけた。
絶対言うもんか!マフラーありがとうだとか、助けてくれて嬉しいだとか…!
「誰が言うか!」
「………お前、今口に出てたぞ」
「は!?」
「こりゃあ…新年早々、幸先いいな」
ニッと口の端を上げる政宗に、私は到底敵わない。
「〜〜〜バーカ!!」
「ガキか」
素直になれって
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