Harry Potter
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「…っ」
セブルスが寮へ戻るとナナシは暖炉の上の方でぼんやりと浮かんでいた。
(あれじゃ、ゴーストと変わりないな)
思わず声に出しそうになるのを堪えて、部屋へと向かう。
《あれ?セブルス?》
ナナシの声に一瞥すると立ち止まることなく階段の奥へ進むセブルス。
ナナシは焦ることもなく、口許を緩めるとセブルスを追う。
「…」
《ルームメイト君はまだ、帰ってないね》
扉から顔を出すナナシの第一声。
そしてふわりとセブルスのベッドへ腰掛ける。
「ナナシ、」
《ん?》
言い辛そうなセブルスは、何度か口を動かしたのち早口に礼を言う、と溢した。
《ふふ、いいえ。どういたしまして。私はセブルスの恋を…成就させるためにいるんだからお礼なんて》
いらないよ、そう言う間もなくセブルスは机に向かってしまった。
《…勉強ね。はいはい。全くもう少し素直にしたらいいのに、勿体ない》
無理しないでね、お休み。そう言うとナナシは消えた。
一人部屋に残るセブルスはナナシが消えたのを確認すると、ふうと息をはいた。
「素直に、か…。お前は本当はなんなんだろうな…ナナシ」
セブルスの呟きにもちろん返事はなく、教科書から視線を外したセブルスはナナシの本の入った引き出しを見つめた。
「僕がもっと強ければ…素直に、出来るのだろうか」
そう言ったセブルスの瞳は闇色だった。
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