Harry Potter
□6
2ページ/3ページ
翌日。ふくろう試験がすべて終了し、ホグワーツは晴れやかな表情の生徒たちで賑わっていた。
《ああ、嬉しそうだなあ》
一人ふわりとホグワーツを歩くナナシは回りとは対照的に暗い表情だった。
《結局セブルスと今朝から話すどころか、顔すら合わせてない…》
がっくりと項垂れながら、廊下の角を曲がったところだった。
「おい!悪戯仕掛人がまたやってるらしいぞ!」
「スリザリンか?!行こうぜ!!」
ナナシは興奮しながら走り去る後ろ姿を無意識に追っていた。
《…セブルス!》
彼らが着いた先は湖の傍で人垣の中心に逆さ釣りにされたセブルスがいた。
セブルスっ!!ナナシが叫ぼうとした瞬間だった。
呪文を唱え、セブルスを守るようにリリーが躍り出た。
「セブっ!!」
逆さ釣りから解放されたセブルスは屈辱に顔を歪め杖を強く握りしめた。ナナシは何故か身体を動かすことも声を出すことも出来なかった。セブルスに気づかれず、リリーや悪戯仕掛人にももちろん気づかれず立ち尽くしている。まるで世界から隔離されてしまったかのように。
「お前の助けなんか」
(セブルス…)
「っ穢れた血め!!!」
(だめだよっ!!!)
頬を伝う涙は止めどなく、リリーが去り、セブルス、悪戯仕掛人、野次馬が去ってぽつんとナナシだけが取り残された。