Harry Potter

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日が沈んだ。

ナナシは震える身体を抱き締めると、弾かれたようにセブルスの元に向かった。






「セブルス…」



一人きりで膝を抱えるセブルスにナナシは声をかけた。

「もう、だめだ…リリーは」

許してくれない。注意していなければ聞き取れない小さな弱々しい声だった。ナナシは独白のようなセブルスのそれに耳を傾ける。他に、何が出来るのだろう。


「彼女を守る為…、僕を見てもらう為……」

「うん…」

「っ!お前に何が解る!!」

「…そう、だね。恋愛の神様が聞いて呆れる…でも」

怒りを露にしたセブルスの言葉に自嘲気味に答えたナナシ。


「……お前は一体何なんだ……僕は……リリー……リリー」













きつく瞼を閉じていたセブルスは、ふらりと立ち上がった。

ナナシは少し距離をおいてセブルスの後に続いた。
真っ暗な廊下を進むセブルスとナナシは誰に会うこともなく、無人の図書室に入る。








「なんて、偶然だろうね。セブルス」

言葉はさらりと唇からこぼれた。しかし返事はない。
セブルスの足は奥へと進みナナシがよく見知った場所に着く。

「セブルスが私を見付けた時も、─今も誰も私たちを邪魔しない」

セブルスから瞳を逸らすことなく話すナナシ。しかしセブルスの返事はなく、戸惑うことなく夜色のローブから一冊の本を出した。

月明かりが一瞬、二人を照らした。
ナナシは目を見張った。

セブルスは眉をひそめ、本の背表紙を撫でると小さく唇を動かした。ナナシが言葉をかける間もなく本を閉じ本棚にしまった。









月が雲に隠れ、再び暗闇が辺りを包んだ。セブルスはひとり図書室を後にしていた。
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