Harry Potter

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私服のナナシを訝しげに見る生徒の視線を抜け、校舎を出るときだった。

遠くの木陰に何度も話した、何度も笑いは合った、何度も怒られた、いつも、一緒にいた闇色を見つけた。


ナナシは真っ直ぐ彼を見て、一歩、また一歩と近づいた。
そして

「はじめまして」


声は上ずっていなかっただろうか、聞き取ってもらえただろうか。
セブルスは本から顔を上げまま、動かなかった。


一瞬、間があいてから大きく見開いたセブルスの瞳には確かにナナシが映っていて、ナナシは何だか嬉しくて小さく笑ってしまった。

「お前は……ナナシ、なのか」

「うん。はじめまして、久しぶり。セブルス」

ゼブルスは何故だ、本は戻したはずだ、そう言って眉間に皺を寄せた。

「そうだね、ここに本はない。だけど私はここにいる」

セブルスから視線を外すことなくナナシは話す。

「何なんだ…お前は」

そんなナナシの態度に更に皺の数を増やしたセブルスの言葉は冷たかった。
ナナシは答える。

「…恋愛の神様のつもりだったんだけど、今はね、セブルスに会いたくて…ここまで来たよ」


だから、セブルスに触れる事ができる。と、そっとローブ越しに腕に触れて離す。何だかそれだけで胸がいっぱいになってしまったけど、セブルスはまた驚いた様子でナナシから一歩身をひいた。

そして憤怒の形相で睨み付けナナシの胸ぐらを掴んだ。

「そうか…お前は僕を騙していたんだな。何が恋愛の神様だ!!お前の手の内で踊る僕はさぞ滑稽で楽しめただろう!!!お前の狙い通りに事が運んだ、リリーは、っリリーは僕から離れていった!!!」


憎しみの籠った双眼をに射抜かれながらもナナシの瞳が逸らされる事はなかった。

「…ごめ、んなさい、セブルス。
私は、貴方を騙して、しまった…私は、私はただの人間で、酷く無力で、神だ、なんて…ごめんなさい、本当にご、めんなさ、い…」

ナナシが口をつぐむと同時に地面に投げ落とされる。
痛む身体にを叱咤し、ナナシは再び口を開いた。

「っ、セブルス、彼女は貴方を案じてる。それは、今でも変わらない」

「うるさい!黙れ!!」

「彼女にとって貴方は、セブルスは大切な人なんだよ」

「っ黙れ!!容赦はしないぞ、偽善者め!!!」

そう叫んだセブルスはナナシに杖を向けた。

「私なんかは信じなくていい、今更信じて貰おうだなんて思わない。だけどね、彼女のリリーの想いは」

「インカーセラス!!」

「っぐっ」

ギリギリと身体、そして首を縛り上げられてしまった#NAME1##

セブルス、伝えたいのに!!伝えなきゃいけないのに!!
彼女を、セブルスの愛したリリーを信じて!!!


ナナシの声にならない叫びは、ブツリと途切れた意識に消えた。



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