その他

□素直に
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「秀麗!!!余の薔薇姫になってくれ!!!」

秀麗が薔薇姫の話を最後まで話し終えてしばらくたった日の朝。劉輝は沢山の薔薇を抱えてそう言ってきた。何十本という薔薇の花束に驚きながらも秀麗は端的に答える。

「え、嫌。」
「な、何故なのだ!!!余はそなたを愛しているのに!!!」

恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなく吐いた劉輝は思わず薔薇を握り締める。
勿論刺はあらかじめ抜かれている。
綺麗に包装されたその花束はいつものように劉輝がそこら辺で引っこ抜いて来たものではない。花屋でちゃんと見繕ってもらったのだろう。
誰かに買ってこさせたとは考えなかった。劉輝ならきっと秀麗のためなら自分で花屋にでも行く。
結構忙しいだろうにわざわざそんなことをする劉輝に少し感動しながらも秀麗は溜め息をつく。

「あのねぇ、…」
「ずっと傍にいて欲しい。」

秀麗は劉輝の直球に言葉を詰まらせる。
言われて嬉しい言葉ではあったが、秀麗はそれに答えられない。
元々劉輝に仕事をさせるために後宮に入ったのだ。
そろそろ元の場所に戻されるだろう。
そしてもっとちゃんと劉輝に釣り合うお姫様が呼ばれることだろう。

「…駄目よ。私は薔薇姫にはなれない。」

秀麗のその言葉をどうとったのか劉輝は何故か目に見えて慌てはじめた。
訳が分からずそれを見ていると劉輝は手にもっていた花束を秀麗に押し付けてから頭を下げた。
本気で驚いた秀麗は花束を投げかける。
王に頭を下げさせたなんて噂にでもなれば大変だ。

「ちょ、どうしたのよ!!?」
「すまぬ!!!失言だった!!!余はそなたに、紅の姓など関係なく、秀麗として傍にいて欲しかったのだ!!!」

秀麗は無理矢理劉輝の頭を上げさせた。
言いたいことは分かる。
しかし劉輝が王である以上秀麗が紅家の名なしに傍にいることは出来ない。

「劉輝、お花ありがとう。」
「しゅ…」
「お礼に二胡弾いてあげるわ。」

秀麗はそれだけで顔を輝かせる劉輝に申し訳なくなった。
はぐらかしたのを気付いていながらも気をつかっていつもと同じように接してくれる。
自分が答えを出せないことを分かっているから。
思いを受け止められたらどんなにいいことか。
薔薇姫のように男の愛を素直に受け入れられたなら。



あなたを愛していると何度でも言えるのに。

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