その他

□チェックメイトと囁いた
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「チェックメイトです。」
竜崎は指先で摘むようにしてキングを落とした。
カランという軽い音と共にキングが倒れる。
月は内心悔しがりながらもそれを表情には出さず、降参だ、と両手をあげた。
「これで私の三連勝ですね。」
竜崎は挑発するように呟く。
実際月は今まで三戦三敗とずっと負け続けていた。
怒りを抑えながら笑顔を作り出し竜崎に向ける。
「流石、強いな。」
「月君も強いですよ。松田じゃ相手にもならなかったんで嬉しいです。」
「…コレ、松田さんにも聞こえてるんだぞ。」
竜崎は知ってます、と笑った。
そしてチェス盤に駒を並べ直し始めた。
月は苦笑してそれを手伝った。
「まだやるのか?」
「えぇ。月君が勝つまで何十回でも。」
(負かす気満々じゃないか。)
月がため息をつくと竜崎は指を立てて思い付いたように言った。
「特別ルールをつくりましょう。月君が勝てばキラ。負ければ私のはやとちり。」
「僕に負けろと?」
「お好きなように。」
竜崎は、探るような笑みを浮かべている。
ここで月が勝てば自白しているようなものだし、負ければわざとだという可能性が出て来る。
どちらにしても月がキラだという裏付けの為の条件のようだった。
「それじゃぁ僕は勝つことにするよ。」
「キラなんですか?」
「いや、キラじゃないから安心して勝てるんだ。」
キラであっても宣言しておけば条件など関係ない。
竜崎はつまらなさそうな顔をした後すぐ悪戯を思い付いた子供のように笑って、紙を取り出した。そして何か書いたかと思うとチェス盤の下にいれ込んだ。
月が首を傾げていると竜崎は楽しそうに言った。
「特別ルールを増やしました。月君にはまだ秘密です。」
「…じゃぁ始めようか。」
サイコロを振って、先攻竜崎、後攻月になりゲームが始まった。
初めは月が優勢だった。
しかしゲームが進むにつれ竜崎が追い返し、結局月がチェックメイトをかけられた。
「勝つんじゃなかったんですか?」
「勝たす気すらなかったくせに。」
「わざと負けろと言うんですか?」
竜崎は悪戯が成功した時の子供のような顔をしていた。
月は嫌な予感がして、チェス盤の下の紙を取り出す。
「見てもいいか?」
竜崎は無言で頷く。
ニヤニヤとお世辞にも上品とは言えないような笑みを浮かべていた。
月がそっと紙を開くと、特別ルールと書いてある下に『勝った方が攻、負けたら受』とあった。
「賭けチェスだなんて言わなかったろ!!!」
「言ってませんよ。賭けではなく特別ルールですから。」
竜崎は言いながら月の服を脱がせ始める。
いくら逃げようとしても無駄だと分かっていたため言葉で説得しようと試みるがそれも無駄なことだ。
「父さん達に見られているんだぞ!!!」
「知ってます」
「ならやめろよ。」
「嫌です。」
「…勝ちを急いだのはこのためか。」
「月君にヤられるのは別にいいんですが、ヤる気ないでしょう?」
「カタカナで発音するな気持ち悪い。」
竜崎は往生際が悪いですよ、と言いながら獲物を狙う鷹のような目で月を見た。
いつもの無表情からは思い浮かべることすら出来ない表情で、月は動けなくなる。
竜崎は満足そうに微笑んだ。

その後、大画面のモニターには竜崎と月がでかでかと映し出され、捜査本部の人達はAVでも見るときのように凝視していたが、気まずくて見ていられなくなった夜神父が黙ってスイッチを切ったのだとか。

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