その他

□定期テスト
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定期テスト

憂鬱な時期がやってきた。
クラス内では他人に刺激されてピリピリし始める奴が増えはじめ、こっちまで苛立ってくる。
ただでさえ頭を抱えたくなるような奴らを抑えておかなければいけないというのに、これ以上イライラさせるような行事を増やさないで欲しい。
「あー、もぅ!!!エイゴなんて分かるわけないじゃないのよ!!!やる必要なしっ!!!外人被れがっって斬られちゃうわ!!!」
「…いつの時代だよ。」
「止めときなよ一角。斬られるよ。」
「うーあー…むーぅ?」
廊下が煩い。先生に聞きに行くと言って出ていった四人が帰ってきたらしい。
冬獅郎は盛大に溜息をつくと、頭を抱えた。
少しばかり常識を持つせいで苦労が絶えない。眉の間によった、見た目に似合わない深いシワはこのまま消えることはなさそうだった。
(あいつらに構ってると勉強どころじゃねぇ……仕方ない)
冬獅郎は見つからないように上手く教室を抜け出すと、おそらくまだ残っているだろう勤勉な不良の元へ向かった。
しばらく廊下を歩いて目当ての教室に行くと、予想通り机に向かって勉強していた。
黙って教室に入ると、オレンジの頭が振り返った。
「冬獅郎?」
「日番谷隊長だ、馬鹿野郎。」
怒ったように言いながらも、内心ではすっかり気が抜けていて、気付かれないかどうか心配だった。
こんな奴といるだけで安心出来るなんて自分も随分趣味が悪い。と、本人聞かせたら文句を言われそうなことを考えてみる。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
心配を余所に、輪をかけて鈍感な一護は険しい顔をして聞いてくる。
最近色々とあるせいか、一護は冬獅郎が顔を見せるだけで何かあったのかと思っているようだ。
会う度にそんな雰囲気になられていても困るのだが。
冬獅郎は黙って英語のテキストを机の上に投げた。
「…!」
一護の表情が緩む。
今度はからかうように笑顔を浮かべると、仕方ねぇな、と溜息をついた。
冬獅郎は一護の隣の席をくっつけると、そこに座った。
「お前も英語だけはできねぇよな。」
「うるせぇよ。」
一見ヤンキーに見える一護も教えるのは上手いようで、解説は分かりやすい。
冬獅郎は冬獅郎で理解力はある方なので二人だけだと勉強がかなりはかどる。
あっという間にテキストの範囲が終わった。
「うーっしそろそろ帰るか。」
「あぁ。」
まだ5時すぎなのにすでに外は暗く、東側には星が出ていた。
校舎内は静かで、四人はすでに帰ってしまっているようだった。
冬獅郎は完全に防寒し、冷気に備える。
一護はそれを不思議そうに眺めた。
「氷雪系最強の隊長なのに随分厚着なんだな。」
無視して、教室を出ようとすると頭からコートを被せられた。
背中の辺りが妙に暖かいと思ったら使い捨てカイロが凄い量貼ってあった。
一護を見ると照れ臭そうに笑って呟いた。
「風邪ひくなよ。貸してやるから。」
逆に一護の方が風邪をひきそうな格好になっている。
冬獅郎はコートの内側からカイロをいくつか剥がすと一護に貼り付けた。
「風邪ひくなよはこっちの台詞だ。」
放課後の憩いの場を当人にすら奪われたくない。
ただのエゴか、心配からかは冬獅郎にも分からなかったが、大切だということだけは断言出来た。
憂鬱なテスト期間だけど放課後だけは永遠に終わらなくても良い。

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