その他

□君のために
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「ゼロ…レクイエム」

ルルーシュは哀しそうな笑みを顔に浮かべて立っていた。
もう考えを覆すつもりはどこにもないようだった。
人々は彼が自らの死で全てを終わらせようとしているなど考えもしないだろう。
独裁者であり、統一者であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして世界を変えようとするなど思いつきもしないだろう。

「スザク、俺はユフィの仇だ。お前が…仇をうて。ユフィは戻らないが、世界は変わる。後は…任せる。」
「…ルルーシュ……」

そうだ、ルルーシュはユフィを殺した。
世界中のたくさんの人を殺した。
それが求める世界の為でも、許されることではない。
なのに、俺は、迷っている。
ルルーシュを殺したくはないと心が叫んでいる。
やらなければ何も変わらず憎しみが残り続けると分かっているのに。

「君が…」
「ん?」
「…君が死なずに終わらせることは出来なかったのか?」

今からでも結末を変えることは出来るはずだ。
そう思ったから言ったはずだったのに、何故か変えないことを前提で聞いていた。
決意が変わらないと感じていたからだろう。
ルルーシュは驚いたように目を開き、そしてまた微笑んだ。

「あぁ。」

何でこんなに人の為に思えるのだろう。
残った者たちの幸福を願えるのだろう。
世界に自分は残らないというのに。
"哀しいじゃないか"
そう考えて気づいた。自分はもうとっくにルルーシュを許していたのだと。シャーリーと同じように。
許せなかったのは、守れなかった自分の弱さだった。
大切な人を失った悲しさのせいでルルーシュを憎んでいると思い込んでいたのだ。
だからこんなに哀しい。

「ルルーシュ、俺は……君も、皆で一緒に…また一緒にいられるような世界を……!!!」
「スザク…。駄目だ。それでは俺もお前も俺達自身を許せなくなる。」
「でも…!!!」

涙が零れて落ちた。

「お、オイ。スザク?」

ルルーシュはあからさまに動揺していた。
まさか泣くとは思っていなかったのだろう。
当たり前だ。自分でもよく分からないぐらいなのだから。


「君はいつも、昔からずっと勝手だった。」

「ごめん…」

「弱いくせに強がってた。」

「………」

「だから僕が守らなきゃって思ってたんだ。…ずっと。」

そう。出会ったあの頃からずっと。
妹を守ることに必死な君を僕が守ろうと。

「君はユフィの仇だ、ルルーシュ。でも、それ以前に僕の親友なんだ。本当は討ちたくなんかない……!!!」

「スザ…」

「でも!!!ルルーシュはそれを望むんだろ?」

それなら俺はゼロとなり、君の望みを叶える。だから、今ぐらい泣いたっていいだろう?




偉大な国王の為に。
正義の悪役の為に。



大好きな親友の為に。

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