捧げ物


□一緒に
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ロックオンは目の前に座り、コーヒー片手にくつろぐ男を凝視していた。
雰囲気だけは立派な大人なのに、どこから見ても10代後半の超童顔だ。
ティエリアかアレルヤと同じくらいだと言われても何の違和感も感じずに納得出来る。
それなのに実年齢は27。
24歳のロックオンからしてみれば3つも年上の相手だ。
三十路を突破してもこの顔のままなんじゃないだろうか。
そして最終的には老若男女を魅了するロマンスグレーに。
ロックオンは思わずニヤケかけた口許を押さえて引き伸ばす。

(現実を見ろ。現実を。それまでずっと一緒にいられるとは限らないじゃないか。)

そもそもソレスタルビーイングに所属するロックオンとは敵同士だ。
男もといグラハム・エーカーはユニオンの軍人で、ロックオンと同じ様に機体で戦う。
どうやらロックオンとも一度やりあったことがあったらしく、グラハムはそのことを楽しげに語ってきた。
あの、デュナメスごと押し倒してきた変態フラッグが彼だと知ったのはその時だ。

(……あのことは忘れよう。)
「どうかしたのかい、ニール。私の顔を見ながらニヤニヤしたりして。」
「…え?」

グラハムが微笑みながらも不思議そうに首を傾げる。
どうやらまた、無意識のうちにニヤケてしまっていたようだ。
まずいまずいと口を覆って、ロックオンは何でもないと空いている方の手を振ってみせた。

「そうか。」

グラハムがそう言ったのを聞いてからロックオンは横に積んであったクッションに倒れ込み顔を埋める。

(好きなんだよなー…敵なのにな…。あー、刹那とティエリアに怒られそうだ。)

ふぅ、とため息をついて起き上がろうとすると、頭を押さえられもう一度クッションに突っ込む。
いつの間にか隣に腰掛けていたようでグラハムはロックオンの頭を押さえた手でそのまま髪を少し掬った。

「君のことだから何でもないなんてことはないんだろう?」
「将来について考えてただけだから。」
「将来か!それなら私にも少し考えがあるぞ!」

グラハムはロックオンの頭を撫でながら言う。
そしてその情景を思い浮かべるかのように目を閉じた。

「90歳まで生きて、君に看取られながら死ぬ。」
「オイオイ、俺を残していく気かよ。」
「いや。それからその次の日には君も死んで、今度は死後の世界で一緒になるのだよ!」
「ずっと一緒にいるつもりか?」

ロックオンが呆れたように笑って聞くとグラハムは当たり前だと頷いた。
ずっと一緒だなんて不可能だと思っていたのに、あまりに自信満々に言うから、それ以外絶対にありえないような気がした。

「…まぁ、そうだよな。」

お互いにこんなに好きで、愛し合ってるんだから、運命だって変わっていくはずだ。


それでも願わずにはいられない。

どうか永遠にあなたの傍に。

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