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□Can Look
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突撃兵にも伏兵にも臆さず、伊達軍は首謀者を目指してひたすら突っ走る。
本来ならば、本陣にいなければならないはずの政宗もその一人だ。
「おいおい。もっと骨のある奴はいねぇのかよ」
つまらなそう言っているが、その表情はそれとは真逆だ。
雪に足を取られて思うようには進めないが、屋敷に篭っているよりずっといい。
久しぶりの戦の空気に、刀を持つ手にも力が入る。
「政宗様。あれほどお一人で先走るなと申したはずです」
雪を散らしながら、小十郎が近付いてきた。
しかし、そんなことで彼は止まらない。
「後から付いていくだけじゃ、楽しめねぇだろうが」
悪びれた様子もなく、そう叫ぶ。
そうこうしている間に、敵の本陣へついてしまった。
「ここが最後の砦だというのに、人気がない」
あまりにも静かすぎる。
ざわざわと小十郎の心が波打った。
耳を澄ませ、目を凝らし、辺りをぐるりと見回す。
「政宗様。上です!」
その声に空を仰ぎ見る。
崖の上からでは、農民たちが雪玉やら石、鍬などを投げ付けようと大きく振りかぶっていた。
数が多すぎる。
あれでは防ぎようがない。
「お侍なんか嫌いだ」
「おらたちの畑を荒らすな」
「今すぐ帰れ」
農民の悲痛な言葉と共に、先刻まで手に握られていたものが政宗に向かってと力の限り投げられる。
そう。狙いは政宗だけだったのだ。
「政宗様ぁあああ」
小十郎は強く地面を蹴った。