学校ではクラウチングスタート

□赤い爪
1ページ/1ページ




.赤い爪.


「爪って燃えますかー?」
「なんですか、唐突に」


二人しかいない理科室で響く声


「明日調理実習なんですよ、切らないと」


自分の伸びた爪を見上げて小さく溜息をついた
せっかく伸ばしたのに


「爪切りありますか?」
「なんで爪切りが理科室にあるんですか」
「そうですよね」


あはは、と笑う私の元に歩み寄り、手首を掴んで自分の目の高さまで持ち上げる明智先生
さらさらとした長い髪が触れそうで、すこしドキドキした


「でも」

ガリッ


「痛っ」
「貴女の爪くらいなら私が除去してあげますよ」


つぅ、と指先から流れる赤い血液は手のひらに、手首に腕に赤い線を残して床に滴る
べーと長い舌をだした明智先生からぽろりと噛み取られた爪が落ちた


「痛い…です」
「あぁ、いつ見ても貴女の血はいいですね」


誉めてもらっているのか、喜んでいいのか分からない
それでも私の血をうっとりと眺めて高揚感に浸っている明智先生


「赤い、赤い血…貴女の肌に良く映える」


先生、今チャイム鳴りました。
私そろそろ教室に戻らないと
なんて言っても聞こえないんだろうな


「明智先生…」
「なんですか」
「手、放してください」


私がそういうと案外あっさりと解放された


「チャイムが鳴りましたね、まだ授業があるでしょう」


なんだ、聞こえてるんだ


「明智先生」


白い髪を揺らして私から遠ざかっていく貴方に


「血が、似合いますね」


なんでこんなことを言ったんだろう


「どういう意味ですか」
「分かりません、でもそう思ったんです」


*   *   *


「お米とげない」


ほら、と絆創膏を張った指を見せると
友達はまじまじとそれを見た


「どうしたの?」
「……噛まれたの」


驚く友達を気にせず


「えへへ」


私は嬉しくて笑った


血が似合う貴方に
血が似合うって言われちゃった





end




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ