短編

□夏と冬との温度差
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ここは、某こと真田幸村が城主の上田城。普段人の出入りが激しくないそこに、一人の男が門をくぐる。



夏と冬との温度差




「幸、祝言をあげようよ!」

「………………は?」

とある昼下がり。
上田に来るなりあの男が放った言葉。あの男とはもちろん前田利家の甥の前田慶次のこと。
この前は佐助を殴り蕎麦を食して何処かに行くと云う暴挙を果たしたが、今度は何なのか。思わずマヌケな声を出してしまったではないか。

「だーかーらっ!祝言をあげようって言ってんのっ!」

黙ってたからか意味が分からないととられたのか、あの男がまた説明をする。いや、意味は分からなかったが。
………しかし何なんだその聞き分けの無い子供に言い聞かせるような言い方は。殴って良いのか、良いんだな。

「グァ………!ちょ……いきなり何で殴るの!?」

みぞおちに入れたら黙るかと思ったが………かえって五月蠅くなったな。
しかし………『何で』だと?
馬鹿なのかコイツは?
…………ああ、馬鹿だったなコイツは。

「ちょ………!馬鹿って酷いよ幸!」

ち、声に出てるとは。
この幸村も、まだまだだな………。

「ま、いいか………。祝言をあげようよ!」

いいのか!?
それよりふりだしに戻したいのかこの馬鹿は?

「………ふざけるな」

「ふざけてないよ?俺、ホンキ」

「お前なんか大嫌いだ」

「俺は幸のコト好きだよ」

「二度と顔を見せるな」

「それは無理」

あああ、これではイタチごっこではないか!

「もう終わり?」

ぐあああああ、は ら た つ !
巧く暗殺出来ぬものか!?




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